第14回 第三次ブーム到来の古物市場
今回はもう少し広い目で見た「市場ブーム」について掘り下げてみます。私は、現在の古物市場ブームは「第三次ブーム」だと思っています。今のブームの特徴は後ほど述べますので、まずは第一次ブームから。
今でこそ全国各地で毎日のように大規模な市場が開催されていますが、以前は開催地域も場所もずっと少なかったのです。大きな市場といえば(今では創立から数十年を数えるような) 伝統ある市場がほとんど。当時は、それらの市場に全国からの参加社や出品物が集中していたと思います。
参加社や出品物集中化の恐れも
ですが、伝統ある市場の多くは「一見さんお断り」が多く、業界内のつながりが浅い小規模の質屋やリサイクルショップにとって、参加のハードルが高かったのです。また「買い手さん優先主義」を打ち出すところも多く、売り手は自社の出品物に指値を入れることも原則NG。こうした業界の慣わしが長く続いていました。
そんな業界に風穴を開けたのが、山口県下関市で開催されている「monobankオークション下関交換会」。"旧態依然とした市場業界の慣習に捉われないこと"を押し出した市場は、参加希望者に対して高いハードルを課さず、オークション初心者も広く受け入れる姿勢を打ち出したことで、全国の質屋やリサイクルショップからの支持を集めました。
これを皮切りに、全国で新しい市場が続々と登場。「コメ兵」さん主催のレストランオークションや、当社主催のRKグローバルオークションを始め、今日まで様々な市場が生まれていますね。ここ10年ほどの業界の動きは「第二次古物市場ブーム」といえるでしょう。
これらの市場に共通するのは、広く門戸を開き、参加社を募っていること。また、それまでの市場と比べて参加社へのホスピタリティ向上に注力し、差別化を図ろうとしている面も見られます(例えば、売り手に指値の制限を設けないなど)。卸売専業ではなく、店舗(小売や買取専門店) も営む企業が主催しているケースが多いこともポイントでしょうか。近年はこうした新興市場の隆盛を受けて、古参の市場もサービスを改変しながら顧客獲得に動いているようですから、古物市場間での競争が活発化しているといえます。
そして、現在見られるのが第三次ブーム。第二次ブームの流れを汲んだ新興市場の台頭に加えて「自らが主催する市場に自社商品を大量に出品する」ケースが見られます。自社の市場に出品することで、手数料負担を負うことなく利益を確保するほか、結果として市場の集荷数や出来高を大きく押し上げることから、その評判が新たな参加社の呼び水になるわけです。多店舗展開によって豊富な在庫を集められる業態だからできる、新たな市場の形といえそうです。
今後、こうした形が主流になると、かつての第一次ブームのように"参加社や出品物の集中化"が起こるかもしれません。単独企業で行っている小~中規模の市場は、これからは他社との連携を意識して運営する必要がありそうです。
齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ
執行役員 兼 オークション事業本部 本部長
Profile
グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。
378号(2015/10/25発行)13面