骨董買取の技法 第7回
第3次ブーム到来女子にも人気
「こけし」と言われて、皆さまは何を想像するでしょうか?私は、こけしというと「子消」と書き、東北地方で口減らしに葬られた子の供養の為に造られてきたとずっと信じてきました。しかしこの前、都内のこけし講座へ参加してそれが迷信であると聞きました。こけしとは、「木削子」または、「木形子」と書かれるそうです。今、第3次こけしブームだそうで、こけしを愛でる女性、「こけ女」というコレクターも出現しています。
石原日出男 創作こけし
なぜここで「こけし」を取り上げるのか?私は、月に1回ぐらい、千葉の富里の某市場へ参加しています。主に、都内で捌けないものを売るためです。しかしそうは言っても、ここは面白い市場で京都から業者が来ていますし、力のある業者が結構揃っています。話はそれましたが、ここで先日、数十個のこけしの山が出品され、100万円で競り落とされたのです。そこで声を出した業者に聞いてみると、「①戦前のものは高い②数があったのでギャンブル的に買っている。」ということでした。そして先日参加したこけしの講座で専門家に話を聞くと、昨年ヤフオク!で一番高く売れたこけしは、何と1体400万円ということです。オークファンで検索してみると、数十万円から数百万円のこけしがかなりの数、落札されています。
どういうものが高いかという話に入る前に、こけしの種類と系統についてふれてみます。こけしは轆轤(ろくろ) 引きの木製人形玩具で、手足はなくシンプルな形をしており①伝統こけし②近代こけし③創作こけしの3系統に分かれます。(②、③を同様に扱う場合もあります。)
①はさらに、10もしくは11系統に分かれます。一般的に有名なのは、「鳴子」「蔵王」「津軽」などで聞いたことがあるかもしれません。ほとんどが、東北地方の温泉地もしくは近いところです。最初は、温泉街の土産物や玩具といった位置づけでした。また、伝統こけしには、工人(こけしを造る職人)の銘があります。
高額に取引されるのは、伝統こけしの戦前作です。勿論、工人によって値段はかなり変わります。そしてもう一つ無視できないのが、写真にあるような「創作こけし」です。これは石原日出男という作家の作品です。アパレルのビームスが近年、復刻品を販売したほどの工人で数万円以上はします。(この方は鳴子系の伝統こけしもつくっていますが、そちらはあまり高くないです。)
査定時の見方としては、素材が木のため経年により変化していきます。古い物は、こけしの底の真ん中にくぼみができます。これは、年代を判別する際の大きな手掛かりになります。現代は、第3次こけしブームですが、昭和40年代に第2次こけしブームがあったそうです。そのときのコレクターが高齢になり手放しているとのこと。高額なこけしに出会うチャンスはそうないかもしれませんが、買取りで出てきたら、なんとなく気にしてみてください!
藤生 洋
<プロフィール>
昭和42年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、ロッテの財務部で勤務。サラリーマン時代から骨董市に通う。歴史好きが高じて平成11年、31歳で起業。ネットオークションや骨董市で骨董品の販売をはじめる。平成13年には「(有)北山美術」に改称。平成24年には骨董の業者間オークション「弥生会」を3社共同で立ち上げ、会員数200社の規模に拡大する。現在は店舗と事務所を東京・千葉・札幌に展開している。骨董店での修行無しに独自に事業を軌道に乗せた手腕が話題になり、 2冊の著書を上梓。
383号(2016/01/10発行)7面