masuo.、SOSを拾い再出発へ導く片付けサービス
2017年04月07日
「どうしても片付けられない」
近隣への異臭や火事などの恐れがあるゴミ屋敷は、近年社会問題になっている。その中にはただ片付けられない、めんどくさいではなく、認知症や精神的な病の影響で「どうしても片付けられない」という人々がいることを忘れてはいけない。そんな人々のSOSを拾い、再出発へ導く企業がある。
エスコートベアのサービスサイト
masuo.(埼玉県さいたま市)は、介護保険など行政でまかなえない部分をサポートするサービス「エスコートベア」を提供している。例えば家族が遠方に住む人向けに付き添いの病院受診や、家事・買物代行などを行っている。
「私をはじめスタッフは看護師、薬剤師、ヘルパーなど様々な資格を持っています。介護保険などの基準が厳しくなり自己負担費が増えていくなかで、保険外で支えられる民間サービスが必要だと感じています」(澤田裕介代表)。
会員は約160人。高齢者や精神的な病を持つ患者の家族に口コミで広がっている。
様々な依頼に応えるなかで、「片付け」にも需要がある。片付けの依頼は毎月10〜15件コンスタントに舞いこむ。「高齢で認知症や精神的な病気を患った方は、部屋の片付けが上手くできずに物を溜め込んでしまい、日常生活に支障をきたすケースも少なくないんです」(澤田代表)。
溜め込んだ食べ物にねずみが集まった家、2LDKの床一面にチラシが散乱した家など「正直びっくりする状態の部屋も多いです」。
エスコートベアの片付け法は、他のサービスと違う。
まず最初に、「どうしてこんな状態になってしまったか」を徹底的にヒアリングする。精神的に不安定で心を開かない家主の場合は、数日訪問を繰り返し生活スタイルなどを調査、原因を探っていく。そして「またこの状態にしないためにはどうすればいいか」を話し合う。そこで初めて作業に入るのだ。
「我々の最大の目的は、その人の生活環境を整えること。劣悪な環境で暮らすと、病気が悪化し、命に関わることもあるんです」(澤田代表)。
例えばこんな依頼があった。30代の女性は、母親一人で住む実家の大家から「ねずみが出ているので何とかして欲しい」と連絡があったという。認知症を患った母を一人では説得できず、同社で説得、片づけをして欲しいとのことだった。
スタッフが訪問し、生活サイクルを調査したところ、散らかった家の原因は母親が毎日買ってくる食べ物だった。
「認知症の影響か、最初はなかなか片付けることを許してくれなかった。しかし、ゆっくり話を聞いてみると亡くなった旦那さんのための夕食を、毎日毎日買ってきて溜め込んでしまうとのことでした」(澤田代表)。
依頼者の娘にこの事実を告げ、母親の説得に当たり、それから初めて作業に入ったという。「ご家族の方も本当の理由が分かると、お互い歩み寄れますし、今後の関係も良好になる場合が多いんです」(澤田代表)。
412号(2017/03/10発行)20面