Lesson.03 素材を知る
皮を革に変える職人の技術
バッグの素材は「皮」ではないの?いや、「革」だよ・・・。
ハイブランドのバッグや靴、小物類はたいてい革でつくられている(もちろんナイロンやキャンバスもあるが)。手触りが良く発色が綺麗で、正しく使えば丈夫で長持ちするし経年変化も楽しめるのが特徴。また、クリエイター側からすると各ブランドのデザイン、加工方法や仕上げなどによって多彩な表現力をもつ素材でもある。
ところで皮と革、果たして何が違うのか。英語でも明確に違う、皮はSKINで革はLEATHERなのである。
この奥深くなんとも魅力的な素材について、もう少し知ろう。
動物の皮膚が「皮」だ。皮のままだと腐ったり、水分が抜けて硬化したり、切れてしまったり、何よりも臭くて使い物にならない。それを素材や道具として使えるように革へと生まれ変わらせるのが鞣し(なめし) という技術。動物の皮膚から毛や汚れ、血や肉片などをきれいに取り除き、コラーゲン繊維になめし剤を結合させ安定した素材「革」に変化させていく。そうすることで劣化を抑えながら柔らかさと強度を付けていくのだ。
皮と革の構造
原始時代、狩りによって仕留めた獣の皮を身にまとう際には草をすりつぶしてこすったらしいし、文明発達後は油や塩を使ったとか。レザーウェアーの歴史も古いものだ。
そしてその革が化けると書いて靴、包むと書いて鞄、ちなみに革を柔らかくとかいて鞣し・・・実に単純な字だ。
さて現在このなめし剤は、植物由来成文であるタンニンと塩基性硫酸のクロムなどが主流となっている。このなめし剤の種類や調合がタンナーと呼ばれ、なめし業者のオリジナリティーとなる。クリエイターはその特徴差を見て、どんな製品を作りたいのかによって革を選択している。
なめされた革は銀面加工(型押しや模様入れ)、色付けをされ、問屋さんから各メーカーの工場へと渡っていく。繰返しになるが元々は動物の皮膚...人間もそれぞれ皮膚の色やキメの違いがあるように生存中のケガや皮膚の個体差があったりするので、染色後にバッグの前と後ろ、また、靴の左右を全く同じ風合いや色に合わせるなど繊細な目利きも必要。まさしく天然資源、天然素材だ。
次回は動物別、その年齢別ブランド別の利用のされ方などについて知ろう。それから製品の構造へと話を進めていきたいと思う。
1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。
310号(2012/12/25発行)11面