第24回 バイヤーの選球眼を鍛える3つのポイント
近頃、古物市場では「いまは買うべきか買わぬべきか、見極めが難しい」という声をバイヤーからよく聞くようになりました。不安定な経済情勢を受けて、いまは各社とも「いるもの」「いらないもの」の見極め、いわば"選球眼"がよりシビアになっているのでしょう。実際、一昔前ならさほどニーズがなくとも値段次第で落札されていた商材が、最近はめっきり値がつかなくなっています。
買付けに難しい舵取りを求められるいま、損はしないように、かつ踏み込んだバイイングを実践していくために必要な3つのポイントを挙げてみましょう。
要、不要を見極めメリハリある買付けを
① 自社の色をきちんと把握しておく
基本中の基本ですが、自社が得意な商材や売りやすいブランド=自社の色を常に把握しておきましょう。ブランド、モデル、コンディションetc... 自社がどんな強みを持ち、どんなお客を抱えているか知っていれば、自ずと必要なモノ、不要なモノが絞られていくはずです。
② 出口を意識した買付けを心掛ける
これも当然ですが、常に「売れる先」を考えながら買いましょう。①と通ずることですが、お客のことを考えながら小売りなのか、卸売りなのか、はたまた海外に売るか...買おうとしている商材がどこで売れそうか、「商材の出口」を意識してバイイングに臨みます。想定する販路によっても買値は変わってきますから、常に念頭に置いておきましょう。
③ 市場では流れを読んでクレバーに
競りの直前で相場が下がって、これ幸いとばかりに予定よりも多く(あるいは安く) 買えた...なんて経験は、バイヤーなら誰しも一度はあるのでは。でもちょっと待ってください、本当にそれって得していますか?
例えば為替が円高に振れたなら、その金額の振れ幅を吸収した適正値で落札すべき。ところが、市場では競り上がって適正値以上で落札されている場面を見かけます(もちろん、①②で述べたような「商材の出口」が前もって確保できていれば問題ないのですが)。
熱くなりがちな市場でもっとも大切なことは、相場やトレンドの流れを読んでクレバーに立ち回ること。相場が下がったときには高く買って損していないか?逆に、上がったときにはどこまで値を上げて入札しても損をしないか??競りの勢いに流されず、常に集中して臨みたいところです。
以上の3点を押えておくと、いるもの、いらないものを選り分けてメリハリある買付けができると思います。
特に、一部の商材の相場が下落して買いやすくなっている現在は、油断すると安物買いの銭失いになりかねません。例えば、いまはどの市場も小売り向きでない、卸売り向きの商材がダブつき気味です。もともとの下代が高い卸売り向きの商材は、市場でもやや値段が高くなりがちで落札されづらいのです。そうして落札されない商材が市場を巡るたびに相場が下がっていき、一見すると買いやすく見えてしまうのです。
しかし、安いからと飛びついては結局損をしてしまう可能性大です。今回お伝えした3つのポイントを踏まえて、バイヤーとしての選球眼を鍛えましょう!
齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ
執行役員 兼 オークション事業本部 本部長
Profile
グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。
398号(2016/08/25発行)17面