"遺贈"、未来へのギフトでリユースが変わる
2017年05月10日
未来への「ギフト」を
遺産を寄付金に変えるリユース業
遺産を公益活動に寄付する「遺贈(いぞう)」への注目が高まっている。日本財団が昨年4月に相談窓口「遺贈寄付サポートセンター」を立ち上げてから、1年間で1200件以上の相談が持ち込まれた。通常遺産は、相続人がいない場合国庫におさめられるが、遺言に明記すれば特定の団体や人に贈与することができる。遺産の中には、土地や預金だけでなく絵画や宝飾品なども残されている。これを寄付金に変えるのはリユース業の役割だ。
遺産を社会的、公益活動に役立てたいと考える人が増えつつある
「私は貧しい家庭に育ちましたが良い教育を受けさせてもらうことができた。おかげで我が子に十分な教育を与えることができました。恩返しがしたい。自分の遺産は、貧しい子どもたちの教育に役立ててほしい」
日本財団に年1200件の相談
遺贈寄付サポートセンターには、設立してからこんな相談が年中届くようになった。相談件数1238件(3月23日まで)の内、実際に15件が遺言を作成した。
高齢化がすすむ日本では、人生のエンディングをどう迎えるかが重要なテーマとして意識されるようになった。その中で、自分の資産の活かし方として注目されはじめたのが遺贈だ。しかし、どういう活動に寄贈すればいいか、どう遺言に残せばいいのかなど一括で相談できるところは多くはない。そこで日本財団が窓口を立ち上げ、弁護士や税理士など専門家とも連携を図りながら、遺言の書き方や遺贈、終活全般の相談に乗る。
「遺贈は未来への贈り物」と話す日本財団のドネーション本部ファンドレイジングチーム高木萌子氏
遺贈は富裕層が行うものというイメージがあるかもしれないが、同センターは少額の寄贈も受け付ける。「遺産全てを寄付する包括遺贈だけでなく、一部だけでも公益活動に役立てたいと考えて特定遺贈を選択する人が増えているんです」(高木萌子氏)
震災以降、寄付活動に関心を持つ人が増えていることもあり、最近は30代からの遺贈に関する相談も増えている。
実際に遺贈が行われる時に、動産を寄付金に変えるのはリユース事業者だ。「表参道にお住まいだった方が、資産の一部は友人に残して一部は寄付したいと遺言を残されました。担当者がリユース事業者と出向いて、形見分けをしたあとに、査定をして買い取ってもらい寄付金に変えたことがあります」(高木氏)。パートナーとして選ぶのは、「信頼できて、故人の思いに寄り添える視点を持っているリユース店」(高木氏)だと話す。
日本ではまだ一般化していない遺贈だが、アメリカでは「レガシーギフト」と呼ばれ、未来への贈り物として前向きに捉えられている。
日本でも、後生に自分の遺産が社会に貢献することをポジティブに考える人が少しずつ増え始めている。リユース業界は、このカルチャーの良きパートナーになれるだろうか。
遺贈の相談受付けを実施
代表的な機関
◆あしなが育英会
◆全国レガシーギフト協会
◆日本赤十字社
◆ひょうごコミュニティ財団
◆ユニセフ
415号(2017/05/10発行)1面