【社説】黄金茶碗窃盗事件で失墜する買取店の社会的信用

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【社説】黄金茶碗窃盗事件で失墜する買取店の社会的信用

2024年04月26日

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社説 黄金茶碗窃盗事件で失墜する買取店の社会的信用

日本橋高島屋で開かれた「大黄金展」の会場で純金製茶碗が盗まれた事件で、窃盗容疑で逮捕された男が江東区の買取店に売却していたことが報じられた。窃盗で逮捕された男だけでなく、買取った店も批判にさらされている。

黄金茶碗買った店が
批判集める理由とは?

この買取店が批判されている理由は、大きく2つある。1つは、買い受け品に対して盗品との疑いを持たなかったのかという点だ。古物営業法の第15条3項では、不正品の疑いが認められる際には、警察への申告義務がある。

事件が起きた当日のこととは言え、32歳の男性が純金製の高価な茶碗を持ち込んだことに、この買取店は違和感を何も持たなかったのだろうか。即座に転売してしまえば、盗品だとしても、返還義務から逃れられると考えたのか。これでは商売と言えど古物商のモラルが疑われても仕方がない。

2つ目は、買取価格の異常な低さだ。事件当日にあたる4月11日の田中貴金属の店頭買取価格はグラム当たり1万2577円。盗まれた茶碗は約380グラムと言われており、相場価格で480万円弱の金額となる。だが実際には、この買取店は約180万円で買取り、別の業者に約480万円で転売、約300万円の差益をせしめたと言う。"訳あり品"と見積もって査定額を低めに提示した可能性もありそうだ。

リユース業界はモノを現金化するため、以前から窃盗等の犯罪を助長する温床として世間から批判を集めてきた歴史がある。それだけに、買取時は依頼者に不審な点がないか、細心の注意を払う必要があり、盗品と疑わしき品は買い取らない対応がリユース店には、求められる。

盗品流通阻止する
自浄作用が必要

このようなことがまかり通ってしまった際には、盗品流通の阻止よりも商売を優先する店が増え、健全な競争どころの話ではない。更には、犯罪の増加に買取店が加担してしまうことになる。

これによって、古物営業法はより事業者にとって厳しい方向へ改正されてしまう恐れもある。また、古物商の社会的信用は失墜し、業界全体への買取依頼が減ってしまうことも危惧される。既に他の買取店では風評被害が出ているとの声も挙がっている。

買取店だけでなく、そこから商品を買い取る事業者や古物市場など、リユース業界に携わる企業が連携して、盗品流通を阻止する自浄作用が働かなければ、健全なリユース業界の発展は望めない。(編集長・瀬川淳司)

第582号(2024/04/25発行)3面

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