《皮革製品修復ラボ(05)》染色後汚れ透けると風合い損う厚塗りに

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《皮革製品修復ラボ(05)》染色後汚れ透けると風合い損う厚塗りに

2013年02月28日

皮革製品 修復ラボLesson.05 修復の実践

事前検品や前処理が重要

今回はいよいよスーパーブランドバッグの『見映え修復』の実践に踏み込んでいく。

まずは工程をお伝えして、次にその詳細を説明しよう。

ステップ1 作業前検品
品物の特定と状態、使用者の確認などを行い、作業工程と資材を決定する
ステップ2 前処理
クリーニングや下地処理を行う
ステップ3 着彩(染色)
染料や顔料を用いて色と表情をつける
ステップ4 ディティールチェック
細部のミス、色ブレ色ムラをチェックし、コンディショニングを施す
ステップ5 最終検品
オーダー通りの仕上がりになっているか確認する
ステップ6 出荷

以上が、見映え修復の流れだ。

では、各工程で実際にどのような作業を行うのか詳しく紹介する。

現在、修復市場にはたくさんの事業者が存在している(弊社で学ばれた会社も多数ある)が、今回お伝えするのは美靴工房流だ。実際にはそれはそれは細かい作業工程なのだが、読者の皆さんになるべく分かりやすいように、簡易的にまとめてみた。

ステップ1 作業前検品

検品は、最後にするばかりではない。むしろ事前の検品が大切だ。

①品物の特定を行う
例01
(ブランド/商品名) エルメス、ケリー28
(素材) ボックスカーフ
(カラー) クロ
(年代) 90年代もの

例02
(ブランド/商品名) ベアンスフレ
(素材) シェーブル
(カラー/形状) ノアゼットのマチ付き など

②状態の確認をする
キズ、汚れ、シミ、劣化程度、素材コンディション

③クライアントの確認をする
使用者(消費者) か、流通業者か、販売者か。また、細かい要望もヒアリングしておく。

※ クライアントが使用者か販売者かによって求めるレベルが異なることも。使用者なら多少コストをかかけても高いレベルを望むが、販売者なら、コストと売値のバランスを考慮しているなど違いがある。

④新品時をベースに完成イメージを想定。作業工程と資材を決定する

次回は、ステップ2の詳細とステップ3以降の解説を行っていく。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

314号(2013/02/25発行)10面

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