Lesson.30 梅雨時期の保管
家庭でもできる!汚れは中性洗剤で除去
梅雨も終わり太陽の季節に入っていくが、ここでは振り返って梅雨時期の靴の保管についてお伝えしよう。
特別な溶剤や設備のない家庭やリサイクルショップでもできる方法だ。筒状で最もカビやすいブーツを例にとる。
まずはワンシーズンでたまった汗やタンパクなどの汚れをとろう。洗面器いっぱいの水に中性洗剤を3滴くらいの割合で希釈した液をつくる。手であわだてて、着古したTシャツなどをひたす。固く絞って、ブーツの中も外もなでるようにふき取って汚れを除去する。
次に、ファスナーがあれば下ろして1日乾燥させる。風通しのいい直射日光のあたらない場所が最適だ。乾いたら、保湿クリームを革表面に塗る。もし無い場合は、余ったハンドクリーム(無色透明のもの) でもいい。洗剤には界面活性剤が含まれているため革を乾燥させてしまう。オーバードライになるよりは、ハンドクリームでも保湿した方がいい。
保管する時は、シューズキーパーか、無ければブーツの中に新聞紙をまるめて入れて型崩れを防ぐ。新聞紙は湿気を吸ってくれるが、その後湿気の発生源にもなるので3ヵ月に1回程度は取り換えよう。
このようにしてしっかりのばしておけば、型崩れ防止だけでなくノーズ(足の甲を覆う部分) のシワをとることもできる。
最後に箱に入れる。ブーツとブーツの間に新聞紙などをかませて、革同士が接着しないようにするのがポイントだ。箱の蓋は閉めずにずらしておくか、箱に穴をあけて通気性をよくしておこう。
箱が無い場合は、型崩れを防ぐために洗濯バサミではさんでブーツをたてておく。そのままだと痕がつくので、ティッシュなどを間にはさむのを忘れずに。
リサイクルショップのバックヤードで、ぎゅうぎゅうに陳列されているのを見かけるが、本当は革製品の保管方法としてよくない。せっかくの商品価値=売値を下げている。
これまで述べたような理想的な保管は難しくとも、せめて高額な革靴や革のバッグはスキマをあけて置いておいた方がいい。限られた置き場所しかないならうまく空間を利用して、S字フックにつるすなどして通気性をよくするといい。
湿気は革製品の大敵だ。私はこの時期、外出する時家のクローゼットや押し入れ、靴箱を全部あけはなして空気を通している。意外と使えるのがトイレットペーパーだ。これを置いておくと、除湿をしてくれる。
お店の在庫の管理方法としても、お客さんに保管方法を伝える立場としても、ぜひ知っておいてほしい。
1、洗剤を溶かした溶液をつくる
2、靴の中と外の汚れをふきとる
3、直射日光の当たらない場所で乾かす
4、油分を塗布して保湿を行う
5、型くずれ防止にシューズキーパーや新聞紙をつめる
6、通気を確保して箱で保管する
1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。
371号(2015/07/10発行)5面