《ブランド市場バイヤーに学べ46》出品に「要る工夫」と「要らない工夫」
2018年07月06日
第46回 出品に「要る工夫」と「要らない工夫」
市場に出品するとき、「少しでも高く売れてほしい」と思うのは当然ですよね。
しかし、高く売るためにかけた手間が、かえって逆効果となる場合もあります。
今回は、ブランド古物市場に時計、宝石を出品する際にやりがちな余分なひと手間や、より高く売るための工夫についてお話します。
「時計」の出品で気をつけたいのは「ポリッシュ」と「不動品の記載有無」です。
ロレックスを始め、人気ブランドの時計をポリッシュ、つまりはケースやベルトを研磨してから出品されているのを見かけることがあります。
綺麗な方がより高く売れるだろうと、売り手が出品前に研磨しているようですが、これはおすすめしません。
磨いてもノンポリッシュ(研磨してない状態)よりさほど値上がりしないためです。
手間とコストを考えると、ノンポリッシュで出す方が効率的な場合がほとんどです。
また、モデルによってはノンポリッシュの方がかえって価値が上がる場合もあります。
ポリッシュでケースのエッジがだれてしまうと、それだけで値を下げてしまうからです。
基本的にはどのメーカーもノンポリッシュで出品する方が無難といえます。
時計は磨かず動作確認、宝石にはソーティングを
また時計を出品するときは動作確認は怠らないように気をつけましょう。
特に、なんらかの理由で動かない「不動品」は出品明細に必ず記載しておくことをおすすめします。
記載がない場合、後交渉が煩雑になる場合がほとんどです。
売り手にとっては出品物の検品や明細への記載は手間かもしれませんが、後交渉によって結果的に落札値が下がることや、買い手や会主との関係に影響を及ぼすことを考えれば、かけておくべき手間です。
「宝石」の出品で気をつけたいことは、できる限り鑑別・鑑定書やソーティングをつけて出品すること。
付属品の有無は、買い手の心理に影響を与え、落札価格に直接響いてくる要因です。
ソーティング等が付属していないなら、取得され ることをおすすめします。
どうしても取得する余裕がない場合は、最低でも出品明細に必ず石の種別〝R〟(ルビー)や〝E〟(エメラルド)等を記載しましょう。
市場にもよりますが、こうした記載があれば「荷主保証品」として扱われるため、付属品がなくても、買い手も幾分入札しやすくなるからです。
万一、石の種別が違ったとして も、後交渉の対象として扱ってもらえますからね。
ブランドジュエリーは、メーカー発行の修理保証書が付属しているなら必ず付けましょう。
近年はカルティエを始め、不正品が数多く市場に出回っています。
高額なものほど、保証書や修理明細書が付属していれば、それだけで信頼感が高まり、値もつきやすくなるからです。
そして、宝石の出品明細を書くときは、必ずメインとなる主石を初めに書き、次に脇石を記載すること。
順番をばらばらに書いてしまうと、後交渉の対象になる場合がありますから注意が必要です。
また石目の書き間違えなども気をつけたいところ。なお、基本的には宝石の枠の内側等に記載されている刻印のとおりに記載すれば問題ありません。
最後に、「出品明細の書き方」について。
近年はWeb上で出品明細を入力できる市場が多くなっています。
当社主催のRKグローバルオークションでも、昨年 からWeb出品システムを導入しご好評いただいています。
手書きで出品明細を書くのは作業的に大変ですし、Webなら出品した後も、検索や閲覧が容易にできますから、ぜひ活用してみてください。
<Profile>
齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ・執行役員 兼 オークション事業本部 本部長 グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。
第442号(2018/06/25発行)16面