《皮革製品修復ラボ(32)》ブランドバッグをひっそり買取り

検索

「皮革製品修復ラボ」

《皮革製品修復ラボ(32)》ブランドバッグをひっそり買取り

2015年11月15日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

皮革製品 修復ラボLesson.32 外商ルート狙え

世帯年収3千万円以上の家に眠る

それにしても、この業界はよく伸びたもんだ。

当社の場合、百貨店からの依頼が急増したのが伸びの大きな要因だ。特にこの1年で顕著なのが、『外商』経由のお直し依頼。これが、リサイクルショップや質店の買取りにもつながりそうなので紹介しようと思う。

美靴工房は5年ほど前から、百貨店に年2回ほど限定出店している。先日もヴィトン売り場の前に出店し、1週間で約370万円を受注した。この縁をきっかけに、百貨店の外商からも依頼を受けるようになった。

ご存じのように百貨店の外商は世帯年収2000~3000万円以上の富裕層の自宅に訪問し、直接商品を販売している。彼らは、ひとりで何千万円もの売上げをつくっている存在だ。外商同士でも競争があって、よその百貨店の外商よりも自分の紹介する商品や自分自身を気に入ってもらわなければならない。

しかし、いつも売り込みされるばかりでは、お客さんもうんざりする時がある。「また売り込みに来たんでしょう」「もう同じようなのを持っているわよ」とうっとうしがられることも。そこで「いえいえ違うんです。今日は、お手持ちのバッグのメンテナンスで伺いました」と話すのだ。

お客さんの方も、修理を依頼すると「売るのがお仕事なのに、迷惑かけちゃったわね」という気持ちにもなる。ありていに言えば「貸し」ができるわけだ。外商の方も「売るだけが仕事じゃありません。奥様の便利なコンシェルジュですから」と応じる。売る以外のサービスを提供することで、ある種の「絆」が生まれることになる。

都内の百貨店外商は、「はじめて奥様からありがとうと言われたよ」と喜んでいた。

外商の人に聞くと、お客さんの手持ちの商品状態は以下の4つに分かれているようだ。

①購入したが、新品状態で使わず放置している ②中身がベタベタでもう要らない
③キズや汚れ、カビがある          ④遺品になってしまった

当社は修理業なので③を受けている。買い取ってくれないかと頼まれるが、古物商ではないのでお断りしている。修理で手いっぱいで、買取りをしている場合ではない。ただ、リサイクルショップにとっては、これを見過ごすのはもったいないな。と感じている。

外商が来るような家の奥様は、リサイクルショップに行くことはない。確かに考えてみれば分かる事、人一倍高級品の購入が多いが、換金感覚・欲求が無いので売りに行くことはないのだから。そのため、行き場を無くした商品はそのまま市場に出ることなく埋蔵されてしまう。しかしひっそりと、ご自宅で外商が引き取るというのなら、現実的だ。

外商と修理業者とリサイクルショップの3つが組めば、これまで市場に出てこなかった商品を活性できると思う。みなさんは、興味が無いだろうか?

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

379号(2015/11/10発行)9面

Page top
閉じる