《皮革製品修復ラボ(28)》霧吹きで湿らせてテンションかける

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《皮革製品修復ラボ(28)》霧吹きで湿らせてテンションかける

2015年05月10日

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皮革製品 修復ラボLesson.28 中古の靴は売れる

履きグセによる型崩れとシワを直そう

これまでこの連載を通じて「靴が中古商材としてもっと売れる」という発信をしてきた。

状態、サイズなどの問題でなかなかブランドバッグや小物などのようにはいかないかもしれないが、相変わらずネットでは中古の高級靴がよく流通している。それを見てみると人気ブランドで、アップされている写真を見る限りコンディションも良さそうだ。

さてそんな現状を踏まえて、最近リユースのリアル店舗で陳列、ディスプレイされている靴。とりわけ紳士靴を見て気になることがある。

履きグセによる型崩れ、またはバンプ(甲)に深く残る履きシワだ。未使用品との差が歴然としている。言ってみれば前のユーザーが玄関で脱いだそのままの形で形状記憶されて、店頭に商品として置かれているのだ。これはいただけない。

キズ、汚れ、色ハゲ、そして臭いなどはケアされているケースが増えつつあり喜ばしいことだが、やはり今一度言うが日本人は世界一潔癖だ。他人の使用履歴による使用感を好まない。売りはおろか、試着(試履き)にも繋がらない場合が多いだろうと推測する。

霧吹きで湿らせてテンションかける

そこで対策だが、一度水処理し型入れするのがいいだろう。もともと雨の日に履くことがあるのである程度アッパーとソールは濡れる前提でつくられている。だから表面からしみこむ程度なら大丈夫。霧吹きボトルに水を入れてまんべんなく吹きかけ、シューキーパー(100均の製品で充分)をある程度のテンションをかけてカチンとはめればいい。自然乾燥さてもいいし、熱し過ぎないようにヘアードライヤーを利用するのも良い。乾いた後にキーパーを外せばある程度新品時のシルエットに戻っている。パッと見の印象がぐっと変わり、お客さんの食指も動くようになる。

当社なら、靴を丸洗いしてしまうところだが、靴はタイプや価格によって内側と外側の素材、製法、構造が全く異なる。比較的安価な靴に副資材として使用されるパルプ(紙)などは水と相性が悪い。丸ごとビショビショに濡らすのは最悪だ。乾燥後に中底が縮んでしまったり、ポリウレタンや接着剤に悪影響が出たり...。専門家でないと目利きが難しくハイリスクなので避けた方がいいが、霧吹き程度ならOK。ぜひトライしてみてほしい。

当社にはリサイクルショップから、高級革靴をキレイにしてほしいと持ち込まれることが多いが、意外と皆さんが店舗でできることも多い。

まずは着手できるところからチャレンジして、ぜひまだ履ける靴を無駄にせず流通させてほしい。それが靴業界をも活性化すると考えている。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

367号(2015/05/10発行)9面

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