骨董買取の技法 第17回
『紅白梅』・『かぐや姫』・『藤娘』に注目
ガラスというと『バカラ』や『ラリック』など、またアンティークでは『ガレ』や『ドーム』など西洋の作家やメーカーを連想する方も多いかと思います。では、日本では、どうでしょう?
藤田喬平
一番著名な作家は、藤田喬平です。藤田喬平は、ガラス作家として唯一文化勲章を受章しています。著名なのは、『飾筥』(かざりばこ)と言われるガラスの箱です。金箔などが散りばめられ、華やかなガラスです。琳派の影響を受けています。そして「紅白梅」「かぐや姫」「藤娘」など、作品名も華美な印象です。ですから赤や緑、青など派手なものが好まれ、黒など地味な作品は評価が下がります。
そして次に評価が高い藤田作品は、イタリアのベネチアガラスに影響を受けたヴェニスシリーズです。このような様式のガラスは、藤田喬平以外造った人はいないと思います。花瓶、皿、ランプ、茶碗、酒器など多岐に渡ります。盃で10万円前後の評価があります。 しかしこれらは価格も高かったこともあり、買取現場で遭遇するのは結構稀です。よくでてくる藤田作品は白がベースの厚手の食器か、色の入った比較的オーソドックスな形の花瓶などです。食器は丈夫で普段使いにはいいのですが、市場などでは1~2万円です。そして花瓶の方は、3~5万円ぐらいです。勿論、出来や色、大きさにより価格は決まります。
岩田藤七
藤田喬平の次に有名なのは、岩田藤七です。藤田喬平も岩田ガラスに籍を置いていました。岩田氏の子ども岩田久利、妻の岩田糸子もガラス作家です。岩田藤七と岩田久利の作品の相場は、だいたい同じくらいです。酒器で1万~1.5万円ぐらい、花器で2万~3万円。滅多にありませんが、名品ですと10万円ぐらいのものもあります。久利と糸子は、紙箱に入っている作品もかなりでてきますが、こちらは贈答品としての評価で今だと2000円ぐらいになります。そして岩田ガラスのシールが貼付してある花瓶もよくでてきますが、こちらは岩田ガラスのメーカー品です。評価はほとんどありません。
現存作家など
現存の作家で一番著名なのは、宮崎に工房を持つ黒木国昭氏です。黒木国昭の作品で高額なものは、プラチナ彩を使った商品群です。藤田同様、琳派の影響を受けた華やかな花瓶は数十万円で取引されます。
最後に石井康治です。西武百貨店などでよく売られていたようです。花瓶、鉢などが多いですが、色鮮やかなランプも造っています。
氷コップに注目!
市松文ウラン脚の氷コップ氷コップとは、かき氷を食べるための器です。明治時代から、昭和中期ぐらいまで造られていました(今も復刻で造られていますが)。昭和のものは、型ガラスで大量生産品ですが、明治大正期に造られたものは、手吹きガラスで、形、色、文様も様々です。型ガラスですと、数百円といった感じですが、手吹きの珍しいものは、数十万円します。高価なものは、3~4色と様々な色が使われています。例えばピンクのような赤は、金で発色させます。また緑っぽいものは、ウランが使われブラックライトを照らすと光ります(ウランガラス)。
藤生 洋
<プロフィール>
昭和42年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、ロッテの財務部で勤務。サラリーマン時代から骨董市に通う。歴史好きが高じて平成11年、31歳で起業。ネットオークションや骨董市で骨董品の販売をはじめる。平成13年には「(有)北山美術」に改称。平成24年には骨董の業者間オークション「弥生会」を3社共同で立ち上げ、会員数200社の規模に拡大する。現在は店舗と事務所を東京・千葉・札幌に展開している。骨董店での修行無しに独自に事業を軌道に乗せた手腕が話題になり、 2冊の著書を上梓。
405号(2016/12/10発行)9面