Interview
楽器買取専門店を5店展開
年商約116億円で楽器の新品小売・買取販売など19店を展開する石橋楽器店(東京都千代田区)が、積極的に中古を扱っている。専門店として「商品に深みを出す」ための武器になるからだ。中国・上海の店舗でも中古販売に取り組み、最近では買取専門業態にも注力している。同社リユース事業部の髙嶋満部長に、立ち上げの経緯や戦略を聞いた。
石橋楽器店リユース事業部 髙嶋満部長
−−買取専門店の「ミュージックキャッシュ」を開始し約2年になります。改めてどんな業態か教えて下さい。
30〜50坪の店舗でエレキギター・ベース等、いわゆるライトミュージックと呼ばれる楽器の買取りを行います。買取りだけだと集客はうまくいかないので、必ず商品も展示して。数は限られますが新品・中古問わず販売もしています。とは言え、やはりメインは買取りです。
−−店舗数は。
大宮、津田沼、町田、札幌、仙台の5店です。加えて小売業態「イシバシ楽器」の心斎橋、福岡、御茶ノ水の3店では、このミュージックキャッシュをインショップでやっています。
−−御社は〝査定ではなく鑑定買取〟と謳っています。査定との違いはどこにありますか。
査定というと、商品状態を見て減点方式で買取金額を付けるのが一般的だと思います。当社は楽器自体の価値に対して値付けして買い取る、これを鑑定と呼んでいます。故障箇所があっても直せばいいわけですし、楽器は直してやればいい音がするというのも結構あります。だから「ここが潰れているので」、「付属品がないので」等、楽器の演奏上で支障がない部分では極力減額しません。その商品の価値をしっかり見極め、高く買い取ることを意識しています。
−−相場と比較して、どれほど高くなりますか。
楽器には相場観というのが、おそらくあってないようなもの。相場というより、中古を扱う楽器店やリユース店の中で買取価格の差が結構あると思うんですが、当社は限りなくその上限に近い金額で買い取るイメージです。
−−修理やメンテナンスはどうしていますか。
関東にリペアセンターがあり、買い取った楽器はそこに集約します。修理・メンテナンスをきちんと済ませ、その楽器の価値を取り戻してから販売します。専門学校等を出たギターリペアの経験者をメインに、10人くらいでやってます。
買取店で地方へフレキシブルに出店
−−なぜ買取専門店を出店したのでしょうか?
いくつか理由があります。一つは出店のリスクを減らすためです。小売店に比べ買取専門店は、小型の物件でスタッフ数も少なくて済む。固定費を抑えられますし、出店もスピーディー。地方での買取戦略に合わせ、フレキシブルに展開できると思いました。
また買取専門店で出店すれば現場のスタッフは買取りに専念できるので、買取りの質を高めることになります。販売店だと新品小売も行いながら、プラスアルファで中古をやっていて、どうしても買取りに対する取組みが二の次になってしまう面もありますから。
−−なるほど。
二つめの理由は、地方のお客さんがアクセスしやすい場所に、我々が入り込んで行くということです。私は地方リユース店への視察を重ねてきたんですが、いろいろな店が中古楽器を並べている。買取需要があるということです。
当社の販売店は都市圏がほとんど。わざわざ都心まで電車に乗って、車に乗って、楽器を持って売りに行くっていうのは、郊外や地方のお客様にとって負担だと思います。我々の店がない地域からいかに買取るかを考え、出張買取を始め、宅配買取にもトライしました。ですが楽器の特性上、壊れないようにきちんと梱包してもらう等の発送の手間があり、ここからたくさん集めるのは難しい。ですからアクセスしやすい場所に買取店を構え、お客さんが楽器を持ち込みやすくしようと考えたんですよね。
−−出店してみて手応えはどうでしょうか。
まだまだこれからです。1号店の大宮はちょうど2年経ちますが、持込みも増え出してようやく軌道に乗りました。直近で出店した札幌や仙台はまだ認知度が高くないので、これから成果を出していきたいですね。
買取専門店にも商品を陳列し、販売を行っている
会社概要
社 名 株式会社 石橋楽器店
設 立 1979年6月
創 業 1938年6月
資本金 7,400万円
代表取締役社長 五十嵐勝則
本 社 東京都千代田区神田小川町2-14
従業員数 446名(男367、女79)うち正社員173名(2016年8月現在)
事業内容 (1)楽器の小売販売
(2)オリジナル・ブランド商品開発
(3)通信販売事業
(4)ミュージックスクールの運営
(5)中古楽器のリユース販売
(6)楽器および関連商品の輸入
421号(2017/08/10発行)9面