「なんぼや」マザーズに上場 SOU 嵜本晋輔社長
2018年04月05日
買取店70超へ「もう一度アクセル踏む」
ブランド品等の買取専門店「なんぼや」等を展開するSOU(東京都港区)が3月22日に東証マザーズに上場した。設立からわずか6年強という早さだ。2017年8月期の売上高は227億円。上場の狙いや今後の成長戦略等について嵜本晋輔社長に聞いた。(取材日:3月15日)
IPOで共感してくれる人を増やす
――この記事が出る頃には初値が付いていると思いますが、公開価格は3300円に決まりましたね。
嵜本 とりあえず今の自分たちの実力通りの評価かなと。あまり過大評価されてもよくないかなと思っていますので。
――上場の狙いは。
嵜本 如何にビジョンに共感してくれる人を増やすかに尽きると思います。企業の成長って人によるところが大きいと僕は思っています。そういう意味で、今後の成長戦略を考えた時にIPOはひとつの魅力付けとして必要かなと。また、社員のやりがいの創出とかモチベーションを高める意味もあります。ですから、上場は資金調達というより人によるところが大きいですね。
――これまでかなりのペースで売上を伸ばしてこられましたが、前期はさほど伸びていません。成長が止まっているように見えますが。
嵜本 この2期くらいは、教育や研修を充実させる、お客様にご迷惑をかけないレベルのものを作りたいという理由で、出店を控えていました。万全の体制が整ったので、これからもう一度アクセルを踏むという感じでしょうか。
――買取専門店は今、 何店になりますか。
嵜本 「なんぼや」が44店、事前予約ができる「ブランドコンシェル」が6店、骨董や古美術品等を扱う「八光堂」が9店で全59店舗になります。
――公募で45万株ですが、IPOによる資金調達の使い道は出店になりますか。
嵜本 そうですね。主に店舗の出店ですね。あとは社内のシステム開発や広告宣伝費等です。
――2019年8月期までに70店超を計画していますが、これを実現した場合に売上規模はどれぐらいをイメージされていますか。
嵜本 今期の売上高の着地を297億円で見込んでいますので、そこから50~80億円増いくと良いですね。
――国内で何店ほど出店が可能でしょう。
嵜本 そこはまだ具体的な数字は固まっていないですね。新規の出店場所については、主要なエリアの状況を見ながら、ドミナントで増やすという考え方になるでしょう。今は正直、来店したお客さんが平均30分~1時間待っていただくのが当たり前になっていて、そこでの機会損失もとてつもない数で。できる限りお客様の負担を軽減するようにはしていますが、待ち時間は減らしたい。その辺は今後のテーマとして問題解決していかなくてはと思っています。
miney〝物の可視化〟ができるツール
――昨年の12月に新サ ービス「miney(マイニー)」を立ち上げましたが、これはどういったものでしょう。
嵜本 アプリに自分の持っているバッグや時計などを登録しておくと、現在価値や過去の価値変動が見えるというものです。自分の持ち物とその価値が管理できます。
――どのような経緯でこれを開発されたのでしょうか。
嵜本 リユース業界においては、日々ライバル企業と顧客を奪い合って、年々競争は激化しています。そこで戦って勝ち続けるというのはもちろん当たり前ですが、世の中の問題としては、リユースを利用している人はまだ少ないという現状がある。毎月数千億単位の商品がクローゼットにストックされているということです。
では、それを掘り起こすために何をすべきかと考えた時、やはりお客様自身がクローゼットで起こっている問題を知る必要があると。それを分かりやすくするのは、〝物の可視化〟ができるツールだと思うんです。
――なるほど。
嵜本 僕たちは幸い、2013年4月から古物市「スターバイヤーズオークション」を運営していて、日本でもトップクラスでBtoBのブランド品等の売買データを保有しています。その重要な資産を活かして、独自のロジックで一般消費者に物の資産変動の事実を伝えることで、お客様にお持ちの資産を賢くリユースするきっかけを創出できるのではないか と考えたわけです。
――てっきり買取促進のアプリだと思っていました。
嵜本 「物を買いまっせ」のアプリじゃないんですよ。純粋にお客様に正しい情報を提供するアプリで、その一つの手段として買取というサービスがあるだけの話です。今後、買取以外のサービスもどんどん増やしていく予定です。
――例えばどんなことですか。
嵜本 それはまだ言えないんですが、お客様として物を売る以外に自分が持っているものに対して、何がしたいか、課題を解決していくという感じです。
――mineyはマネーフォワードと提携されましたよね。
嵜本 マネーフォワードさんのユーザーは直近で550万人くらい。金融資産の一元管理というサービス内容を考えても、資産管理のリテラシーが高いです。我々がやっているマイニ―は実物資産の把握サービスなので、そのような層に金融資産と実物資産を合わせて総資産として見ることができるという働きかけで、新しい価値観をお客様に訴求するこ とができます。
――ブランド品や貴金属が対象ですが、今後は分野を広げますか。
嵜本 広げていこうと思っています。不動産とか車とか。ロレックスのデイトナ着けている35~45歳の男性っておそらくいい車1台は持っているという仮説も立てられると思うし。新しいアプローチができれば、自分で金額とかが分かるので面白いかなと思っています。
――今はユーザー登録を増やすフェーズですか。
嵜本 まず今期についてはプロダクトの作り込みの時期と考えています。アプリとしての完成度はまだ30%程度と考えていますので。しっかり改善を続けて、ココだというタイミングでしっかり仕掛けていきたいと思います。
――最後に今後の意気込みについて教えてください。
嵜本 正直、今のポジションや成果には、全く手応えを感じていないです。売り上げ規模、社外からの評価という部分で自分たちはあまり納得がいっていない。売り上げは作れても、お客様自身に、100%満足して信頼していただけているかというと、まだまだ物足りない部分があると思いますから。僕自身はこの1~2年は我々の一番の強みである買取りに再度フォーカスする時だと思います。接客の質もそうですし、リユースのイメージが変わるような体験をしっかりと築き上げて、他社と圧倒的な差別化を図れる高みまで持っていきたい。自分たちにシナジーのある企業に関しては、積極的にM&Aも視野に入れながら、着実に本業を築き上げるフェーズだと思っています。
【SOU】
主な事業内容はブランド・貴金属・骨董品等の買取り及び販売。中古品買取り店の「なんぼや」を中心に全国57店舗を展開する。また、自社で買い取った商品を販売する「東京スターオークション」のほか、香港でも3カ月に一度オークションを開催している。ブランド品などの資産を可視化するアプリ「miney」を運営している。2016年の売り上げは連結で226億円、資本金は2億5560万円。2011年12月に設立され、2018年3月に東証マザーズ上場。代表取締役社長はガンバ大阪の元Jリーガーである嵜本晋輔氏。
第436号(2018/03/25発行)7面