骨董買取の技法 第11回
マイセン・コペン・ヘレンド
ブランド品での3大ブランドというと、エルメス・シャネル・ヴィトンあたりでしょうか。景気動向やそれに伴う個人の所得の減少、或いは嗜好の変化などにより、以前よりブランドにこだわりを持つ人は減少しているように感じますが、とはいえ日本人はブランド好きでしょう。洋食器(主に欧州の陶磁器メーカー) についても、同じことが言えると思います。さて、洋食器における3大ブランドはどこでしょうか?
あくまでも、人気という面だけで考えますが、断トツで、マイセンがNo.1。次にコペンハーゲン、ヘレンドあたりが続くといった感じでしょうか。(人によってはセーブルを入れるかもしれませんが、高価であまり一般的ではありません。)
マイセン
売れ筋はカップ&ソーサー(=CS)などの食器類です。そして置物類。まず、食器は実需で売れます。個人で使用する方が大半ですが、店舗などビジネスで使う方もいると思います。ただ古いから売れるわけでもなく、18世紀などに製作されたマルコリーニ期のものは意外と安いんです。一方置物は、ドイツ車を思わせるような精緻な造りと細かい彩色が特徴です。現代の作品でも1924年以前に製作された、所謂「古マイセン」は人気です。古い作品で陶花のついている物は、だいたい欠けがあります。小さな傷ならば、決定的な減価の対象にはなりません。
また、マイセンの中でもあまり人気の無い商品群もあります。それは飾り皿などです。特に、金彩が施され煌びやかな作品は人気が低いです。しかし用途の似ている陶板は花の絵などを中心に売れます。
マイセンの裏印に、薄く横線が2本引かれている場合があります。これは、何か欠陥のある2級品の証です。日本人は特にこの2級品を避ける傾向があり、仕入の際に注意が必要です。
ハインツ・ヴェルナーなど、現代のデザイナーによってデザインされた「アラビアンナイト」などの高級ライン。これらの食器類や花器・陶板などは、明らかに伝統的なマイセンのデザインとは異なります。一見するとマンガのようなデザインですが、CS1客30万円ぐらいします。(CSだけでも12種類)。これらにも偽物はあり、注意が必要です。(金彩の色や表情などを見てください)
コペンハーゲン
ロイヤルコペンハーゲンは比較的よく見かけます。しかしよくあるイヤープレートは、ヤフオクの登場とともにアンティーク以外は売れなくなりました。市場でもヤフオクでも、1枚1000円ぐらいです。では何が売れるんでしょう?それは、フローラダニカとフルレースというシリーズです。フローラダニカは、デンマークに自生している植物をモチーフに絵付けされています。ダニカのCSも新品ですと、1客20万円ぐらいです。(ヤフオクで4、5万円ぐらいです。)
また、フルレースは、コペンの誇る染付の商品群でも、一番手のこんだ絵付けがしてある商品です。市場にセットで出てくると、20~30万円で落札されます。今回の高級洋食器ですが、バブル時に大量に買われています。これから、どんどん出て来ますので、高い物については見逃さないようにしましょう。
藤生 洋
<プロフィール>
昭和42年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、ロッテの財務部で勤務。サラリーマン時代から骨董市に通う。歴史好きが高じて平成11年、31歳で起業。ネットオークションや骨董市で骨董品の販売をはじめる。平成13年には「(有)北山美術」に改称。平成24年には骨董の業者間オークション「弥生会」を3社共同で立ち上げ、会員数200社の規模に拡大する。現在は店舗と事務所を東京・千葉・札幌に展開している。骨董店での修行無しに独自に事業を軌道に乗せた手腕が話題になり、 2冊の著書を上梓。
391号(2016/05/10発行)5面