フクシマ質店は創業330年を超える東京最古の老舗です。江戸時代には大名にもお金を貸していたと言われ、明治末期に中小質店から質草を預かって融資する「親質」として発展しました。
明治末期から中小質屋に融資する親質で発展
創業は元禄2年
九代まで弥兵衛継承
昭和5年頃の店舗と蔵。関東大震災前は漆喰塗りの土蔵が4つもあったが、土蔵、質店、居宅、質草は全て消失した
フクシマ質店(東京都墨田区)は今も営業を続ける都内最古の質店だ。創業は1689年(元禄2年)、5代将軍徳川綱吉の治政下で、赤穂浪士の討ち入りより10年以上も前である。以来334年もの間、庶民の金融を担ってきた。元禄時代、幕府財政は著しく悪化していたが、産業は発展し、貨幣経済が発達して、都市生活の向上は目覚ましかった。
「江戸の頃は、殿様の使いの者がお忍びでお金を借りにきたそうです。質物として多分、お茶道具の類を持ってきたんじゃないでしょうか」と語るのは現在の社長で10代目の福島昌一氏だ。フクシマ質店の店主は9代まで代々「福島弥兵衛」を継承してきたが、昌一氏は本名で通している。現在同店は昌一氏と長男の啓之氏、次男の英明氏によって運営されている。
フクシマ質店は1850年(嘉永三年)の番付「東都五光商」、明治23年の「東京高名質屋一覧表」、明治30年の「東京盛大有名質商一覧表」、明治35年の「日本全国長者番付(五十万円以上の財産家)」などに名を連ねている。明治20年代には既に東京で有数の質屋だったわけだが、明治40年から更なる飛躍が始まる。
第559号(2023/05/10発行)19面