Lesson.29 中古の靴は売れる
4つの『ヒモ』をお客さんに結ぼう
4つの 『ヒモ』 をお客さんに結びつけ、 売上げを伸ばしている会社がある。 当社が技術指導をしているりサイクルショップのことだが、 仮にA社と呼ぼう。
4つのヒモというのは 「買取り」 「販売」 「メンテナンス」 「相談」 のことだ。 前の2つはどこのリサイクル店でもやっていると思うが、 後半の2つはやっていないところが多い。
これらを提供すると、 お客さんが商品を買ってから使用中、 そして売却するまでずっと付き合っていくことができる。 ガッチリと結び付いているので、 いずれかのヒモを手繰り寄せれば、 お客さんや商品が店にやってくることになる。 A社は、 これで買取りを1.5倍に伸ばしたそうだ。
買ったり売ったりの一回の接点では囲い込むのは難しい。 メンテや相談ができてこそ、 お客さんのファッション&ライフアドバイザーとして付き合っていける。
さて、 メンテに着手するリユースショップも徐々に増えてきたが、 その中にはさらに2つのグループがある。 1つは買い取った商品をメンテすることで高く売りたいと思っているグループ。 もう1つが、 メンテそのものを技術価値として捉えて、 顧客獲得に使いたいと考えるグループだ。
高く売りたいグループのある店のスタッフに聞くと、 販売したお客さんの顔をあまり覚えていないと言っていた。 しかし顧客獲得に使いたいグループのスタッフは 「私のおすすめしたシャネル、 使ってくれているかな?」 と考えるそうだ。 長く付き合う前提で対応しているので、 ガツガツ 「買おう買おう」 ではなく、 ソフトタッチな接客になる傾向があるようだ。時間はかかるが、 こちらの方がお客さんの数がたまっていく。
限られた商圏で、 1人のお客さんから何度も利用してもらうビジネスモデルなら、 後者が有効ではないかと私は思っている。 先のA社もこのタイプだ。
メンテや相談機能を持っていると、 自然とお客さんと向かい合い、 お客さんのライフスタイルが見えてくるようなリサイクルショップになれる。 そこでさらに商品やブランドの流行や傾向、 相場の情報を教えてあげると、 お客は 「私はこの店の特別な客だ」 と感じるようになる。 特別感を感じると、 お客は店から離れない 「顧客」 に変わる。
この関係を築くと、 「売ってくれ」 「買ってくれ」 だけでなく 「あなたの今のスタイルなら、 このバッグは持ち続けた方がいいですよ。 傷んだらメンテナンスしますね」 「カジュアルな装いが多いから、 コレが合うと思います」 という技も繰り出せる。
一般的な小売店とは違い、 リサイクルショップは4つものメニューを持つことが可能だ。それによってお客さんと強固に結びつき、 様々なポイントで売り上げをつくることができる。 これは大きなアドバンテージではないだろうか。
1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。
369号(2015/06/10発行)5面