《皮革製品修復ラボ(23)》オゾンで海水や汚泥までさっぱり

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《皮革製品修復ラボ(23)》オゾンで海水や汚泥までさっぱり

2014年11月10日

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皮革製品 修復ラボLesson.23 中古の靴は売れる

『消臭・除菌済み』表示で日本人に有効

紳士靴は元々、婦人靴よりはるかに堅牢でダメージもへっちゃらだ。しかし、中古で販売するにはいくつかの解決すべき問題がある。前回お話したように、未使用やブレークインは中古とはいえ使用感が無いためPOPや魅せ方などに工夫を凝らせばそのまま売れる。

しかし、それ以降の商品には下記のような問題がある。

① 型崩れ
② ソール、リフト消耗
③ 臭い
④ カビ
⑤ 汚れや傷、色あせ

気に入った靴があっても、「サイズ確認も含め、試し履きしたいけど、ちょっと気持ち悪いかも。水虫とかうつりそう...」とお客さんが敬遠してしまうわけだ。これを解決し、コートやジャケットのように気軽に試履きしてもらえるようにすることが、まず大事だろう。

①~⑤の中で最も難易度が低く高い効果が得やすいのは③の臭いだ。それ以外の項目は技術の習得が必要だが、臭いは設備さえあればカットできるようになる。

美靴工房でも13年前にオゾンの消臭装置を導入した。オゾンは、消臭スプレーのように臭いを包み込んでごまかすのではなく、滅菌除菌を行って匂いの元を消し去ってくれる。

さらに、当店ではメーカーに依頼してファンや温度管理機能に加えタイマーもつけてもらった。靴を丸洗いしたいと考え、その安心・安全な乾燥法を探していたからだ。せっかく靴を洗っても、 湿気が残ると逆にカビや臭いを発生させる原因になる。かといって革靴を天日干ししようものな ら、パキパキの台無しになってしまう。

東日本大震災の際には、この装置をつかって海水に呑まれたブランドバッグの再生にも貢献させていただいた。塩と泥を洗って抜き、オゾンで乾燥させて色補修などすると、本当にさっぱりよみがえった。お渡しするととても喜んでもらえたものだ。

さて、話が少し横道にそれてしまったが、日本の技術力を持ってすれば、消臭・滅菌が可能と理解してもらえたことと思う。

靴はファッションなので、履いてみてなんぼだ。世界一潔癖な日本において、そのためにはこうした処置が有効だ。『消臭・除菌済み』の記載は大きな効力を発揮する。抵抗なく試履きできる人が増えるだろう。

今日からすぐにリサイクル店で実行できるプランではないかもしれないが、「家庭でできないから」こそ、お店でやる価値があると思う。

消臭・除菌済みの商品を並べれば、客層も広がる。高価値の商品を持っているアッパー層を集客できるようにもなるのではないだろうか。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

355号(2014/11/10発行)5面

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