《皮革製品修復ラボ(22)》ウンチク好き男性をPOPで魅せる

検索

「皮革製品修復ラボ」

《皮革製品修復ラボ(22)》ウンチク好き男性をPOPで魅せる

2014年10月10日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

皮革製品 修復ラボLesson.22 中古の靴は売れる

歴史とトリビアのある高級靴

おしゃれは足元から――何を今さら。私が靴の業界に入った時には、なんと輝いて見えた言葉だったか。今や古びて見えるほど、当たり前の感覚になってきた。

しかし靴は、リユース業界のリアル店舗では依然として花形商品になれず、前回お話したようにネット上で靴好きの間を飛び交うにとどまっている。

そもそも5~20万円くらいの高級靴は、他のアイテムに例えればロレックスやメルセデス、エルメスやショパールのようなもの。つまり、洒落度も高級感も申し分無い。レストランやショップに行っても他人からよく見られているものだ。何より女性からの視線も熱い(!)。

そんな高級靴だが、高額ゆえに新品にはヤング・ミドルはなかなか手が出せない。中古でたくさんお届けすることで、日本をもっとおしゃれにしよう。

前回、これから着手する業者なら、履き慣らしの最中「ブレークイン」状態で下駄箱に仕舞い込まれている靴をまず狙おうと提案した。

使用感もなく、店側もお客さん側も取り掛かりやすいからだ。

商品を定めたら、次は陳列の仕方を考えよう。「ビジネス」「カジュアル」などカテゴリごとに陳列するのが、ボリュームもあれば素晴らしい売り場になる...が、初めは商品点数も少ないだろう。その場合は、「1点ディスプレイ」をやってみよう。洋服とのコーディネイトで着こなし全体を提案するのだ。雑誌の切り抜きを添えてみるのもいい。

また、高級靴は歴史がありトリビアも多いゆえに、ウンチク好きな男性にはPOPで魅せることもできる。例えば1つ紹介してみよう。ネットのみならずリユース店でも人気なブランド、フランスの『パラブーツ』ならこんな具合だ。

1919年創業、フランスの靴職人がブラジルのパラ港から出荷されるアマゾン産天然ゴムをアメリカ滞在中に輸入してソールに使用。クッション性や屈曲性に優れ、靴は完全自社生 産。雨のパリの石畳で鍛えた、ミシュランみたいなド定番靴。

POPを読めば、グッと商品の価値が高まった感じがするだろう。靴好きにはもちろんだが、そうでないお客さんにも、価値を伝えることができる。いたずらに安く売らずに、適正価格で売ることにもつながる。

ネットでも実店舗でも、中古品は「キズあり」などデメリット表示を正直にすべきだが、それだけでは売れない。お客さんにこのようなワクワクする要素を感じてもらいながら、デザインやサイズ、ファッションコーディネイトや価格などであれこれ検討してもらいたい。

次回は、ブレークイン以外の靴を売る方法も紹介していく。

プラスα
靴は商品自体が魅力と歴史を持っているので、POPをつくる側も楽しんで作成することができるのではないだろうか。調べていけば知識も豊富になり、お客さんとの会話も弾むようになるだろう。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

353号(2014/10/10発行)9面

Page top
閉じる