《骨董買取の技法2》見逃すなかれ。10億円中国掛け軸

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「骨董買取の技法」

《骨董買取の技法2》見逃すなかれ。10億円中国掛け軸

2015年08月10日

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骨董買取の技法 タイトル

骨董買取の技法 第2回

「筋」「箱」「軸先」で価値を推測

リサイクルショップの皆さまも、「大観」「玉堂」など、ビッグネームの掛け軸を買ったことがないでしょうか?しかし、ネットオークションや市場で売ってみたら、数千円。なぜか?

①偽物だった。②工芸などの印刷だった。等の理由が考えられます。私も古物商になりたての頃、便利屋さんから「紫紅」という落款(筆者の署名や印) のある掛け軸を譲ってもらいました。今村紫紅の作品は、美術家名鑑などには5000万円の評価とあります。当時素人であった私は、ある骨董の交換会にこれを出品しました。勿論、大きな期待を持って。しかし、発句は2000円。結果、2500円で落札されました。

横山大観の掛け軸。都内の貴金属店から300万円で買い取りました横山大観の掛け軸。都内の貴金属店から300万円で買い取りました

掛け軸ほど、売り手と買い手の期待ギャップが大きいものはないと思います。

さて、それではこの難解な掛け軸です が、買取りの現場で出会った時にどのよ うに見ればいいのでしょうか?骨董品・美術品全般に言えることですが、まず、一番大切なのは「筋」を見ることです。作品が出た家が①お金持ちであるか。又は、②持ち主が数寄者(コレクター)であるか。このどちらかだと筋がいいということになります。このような家にある掛け軸は、例え「まくり」(表装されておらず掛け軸になっていない状態)でもお金になる可能性があります。逆に、普通の家にあるまくりの作品はほとんどが無価値であると考えても差し支えないと思います。

次に見るのは、作品が収められている箱です。「塗の二重箱」だといい作品の可能性が強く、木地の二重箱だと、駄目な場合が多いです。

そして、最後に軸先。「牙軸」(げじゅく)という用語がありますが、これは軸先が象牙製ということです。一般的に、絵画や書の高価な作品は、牙軸であることが多いです。軸先のランクは、塗の木製(茶掛けなどの書に多い)、鹿角、プラスチックと続きます。プラスチックの場合は、インテリアと捉えた方がいい作品がほとんどです。

例外もありますが、「筋」「箱」「軸先」を見れば価値の予測がつくようになります。

さて去年、中国の明時代の掛け軸が国内交換会で、四捨五入して10億円という高値で落札されました。私も中国バブルの恩恵に預かったことは何度かあります。このお宝、どのような家にあるのでしょうか?私の経験上、次の3パターンが考えられます。①外務省などの公的機関に勤めていて中国に赴任していた、又ビジネスで中国と関わっていた家。②戦前の中国趣味が流行っていた頃に集めた家③書家など、書に関わる職業の家。このような家での買取りが入った場合は、価値あるものを見逃さないように気をつけましょう。

藤生 洋藤生 洋

<プロフィール>
昭和42年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、ロッテの財務部で勤務。サラリーマン時代から骨董市に通う。歴史好きが高じて平成11年、31歳で起業。ネットオークションや骨董市で骨董品の販売をはじめる。平成13年には「(有)北山美術」に改称。平成24年には骨董の業者間オークション「弥生会」を3社共同で立ち上げ、会員数200社の規模に拡大する。現在は店舗と事務所を東京・千葉・札幌に展開している。骨董店での修行無しに独自に事業を軌道に乗せた手腕が話題になり、 2冊の著書を上梓。

373号(2015/08/10発行)5面

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