インバウンド需要減・円高の影響をヘッジ
インバウンド需要の落ち込みに喘ぐ中古ブランド業界。だがそれを予見し、先手を打って海外展開の準備をしていたのが大黒屋(東京都港区)だ。提携や企業買収でスピーディーに拡大し、2015年に英国質店チェーン110店強を傘下に入れた。最近では中国にも中古ブランド買取販売の1号店をオープンしたところだ。今後は店舗展開だけでなく、「グローバルな開発体制によるEC」も本格化する。小川浩平社長に狙いや現状を聞いた。
大黒屋 小川浩平社長
――足元の業績は。
ブランド業態は他社さん皆そうですが、当社もあまり良くない。免税売上減少や円高による利益減のためです。でも正直言うと、僕らはこの円高は数年前から見越していた。こうなると思っていたから海外展開でヘッジするわけです。当然来期は業績改善します。
――昨年12月に合弁会社での中国1号店、「信黒屋華貿旗艦店」をオープンしました。
北京のいわゆる超高級ブランド品店モールの横なので、ハイエンドな品物を買うような人が来店しています。潜在的に客数はすごくあるのではないでしょうか。
――感触は。
好調といえば好調です。販売も始まっているし、先行して行ってきた買取はそれなりに出来ている。ただし日本とは相場が違うので、実際それが売れてみるまでは分からない。きちんとしたモデルになるには、もう少し時間がかかるでしょう。売上的には、国内の大黒屋標準店と同じくらいをやっていく感じです。
現地企業と組むから店舗展開できる
――中国で展開する上での課題は。
中国はセンスも違うし、店作りも違う。またブランドバッグを買取りに出すというのが一般的でないので、その中で売りに来てもらうには信頼がないといけない。店を出したから回せるという話ではなく、参入が非常に難しいマーケットです。うかつに出ると即死だと思います。許認可を取れないだろうし、人材の問題もある。当社は中国のCITICグループと合弁会社を作れたから、やれるんです。
――CITICとは。
伊藤忠商事がタイのCPグループと共同で1兆円あまり出資した相手で、日本で言ったら内閣直属の投資会社。だから中国政府そのものです。本当にオールマイティーなパワーを持っている。
普通はこういう相手と組むのが、すごく難しい。僕自身、中国人と一緒に仕事してきているから、過去の信頼関係があるんです。
結局店舗を回すにはローカルな人を使っていかねばなりません。買取時の真贋判定とか教育等は当然しますけど、それも中国式が分からないとやれない。CITICと組んでいるからこそです。
――2年前に買収した英国質店チェーン、「スピードローンファイナンス」の最近は。
国内店と同じ買取販売スタイルの「DAIKOKUYA UK」という店を、昨年夏ロンドンに出しました。周辺にはエルメス、ルイ・ヴィトン、ロレックス等主要ブランドのほとんどが出店しています。日本で言ったら銀座並木通りですね。出店して半年で国内標準店レベルにまで伸びたんですよ。潜在力があります。ちょうどポンド安もプラスに働いている。
社長プロフィール
昭和31年、東京生まれ。慶応高校・慶応義塾大学経済学部卒。昭和62年、コロンビア大学経営大学院修士課程終了。トーメン(現:豊田通商)を経て、ゴールドマン・サックス・アンド・カンパニー入社。NYでLBOやプライベートファイナンスに携わる。香港系財閥代表を務めたのち、平成9年森電機(現:アジアグロースキャピタル)社長就任。平成25年より、買収した大黒屋の社長を兼務し、ハンズオンで経営に携わる。平成27年、英国質金融子会社を買収。平成28年12月、中国政府系企業CITICグループとの合弁会社を通じ中国1号店をオープンした。
411号(2017/03/10発行)24面