「最終利益は前期比倍の見込みです」
2007年3月に1号店を大阪・難波に出して以来、買取店「なんぼや」出店やオークション運営などで年商220億円まで急成長したSOU(東京都港区)。同社は円高基調の中、「買い方の見直し」を行い、今期は最終利益を前期比倍程度まで見込んでいると言う。
なんぼや(SOU) 嵜本晋輔社長
――中古ブランド業界は苦戦を強いられている企業が多いと思いますが、SOUはどうですか。
うちも今は必死ですよ。12月以降回復の兆しが見えていますが、政治的にも不安定で円高基調というのは、私たちのビジネスでいい状況ではありませんから。その中でどうするか。まず、前期から今期にかけて約8ヵ月間かけて「買い方の見直し」をしました。全てを買い切る姿勢から、利益を追求する形に変えたんです。
――成約率よりも、粗利益を意識したということでしょうか。詳しく教えてください。
それまでは店頭の若いコンシェルジュが個人判断で買い取っていたので、蓋をあけてみると成約率は高いものの、翌月オークションに出品すると、見込んでいる金額に届かず赤字をたれ流す。という状況でした。この買い方はリスクになるなと。
そこで、スペシャリストで形成した専門部隊を立ち上げて、買取りは個人ではなく彼らが最終判断する形に変えました。これで利益率を上げることができました。いったん成約率は76〜77%に落ちましたが、買取りに対する意識を高め利益を追求する姿勢をしっかり植えつけた後、従来の当社の強み――お客さんとの信頼関係を築き、査定金額ではなくトークでクロージングしていく――に戻して成約率を伸ばしにいきました。1月2月の成約率は過去最高の80%後半を達成し粗利益率も過去最高水準まで持ち上げることができましたよ。今期の売上高は前期とトントンの220億円いけるかというところですが、最終利益は前期の倍を見込んでいます。
6月前後に一気に出店する
――最近SOUは買取り店の出店を控えていましたが、買い方の見直しができたということは、また新店舗を出すことになりますか。
そうですね。採用もうまくいきましたし、今年中に4〜6店出す計画です。6月前後にガッと一気に出すと思います。地方にひとつ、都内に3つ。中期的には、なんぼやの直営店をあと25〜30店、だから合計70店くらいを考えています。
――今40店舗で売上高200億円ですから、店舗が増えた時には400億円くらいでしょうか。
それくらいは、いかないといけませんね。
経営層に上がらないとてつもないデータ
――足下は外部環境で大変だとおっしゃっていましたが、SOUは業界内で成長企業と目されています。同業他社とのもっとも大きな違いは何だと分析しますか。
仕組みじゃないでしょうか。買取りの入り口からお客さんが帰る出口まで、あらゆるデータを取っています。現場には様々なデータがありますが、経営層まで上がってこないデータがとてつもなくあるものです。
当社はこの3年で「本当の意味での顧客データ」を取得する仕組みづくりに投資してきました。システムを開発するための会社もM&Aで取得しました。まだ十分データの活用はできていませんが、例えば、査定時にお客さんとやりとりしている動画を使えば、コンシェルジュの強味や弱みを把握することができる。今取っているデータがこれから活きてきます。来年にはまた「こんなことやるんかい」ということがいっぱい発表できると思います。ご期待ください(笑)。
――いったい何だろう。気になりますね。
「脱リユース」がキーワードです。私はいろんなことに興味があるので、本業のリユースとシナジーが見込めるものは色々とやっていきたい。「買取り店を展開してオークションで売る」というのをずっと続けるのではなくて、財産や資産を活かして新たな手を打っていく。今はそういうステージです。リユース事業をやっていると様々なデータが集まってくる。得たもので何を生み出していくのか。消費者のライフスタイルを変化させるインフラになりたいと考えています。
香港オークションは世界展開の拠点
――ネット販売や香港オークションなど新たな取り組みに乗り出していますね。
会社概要
社名 株式会社SOU
設立 2011年12月28日
代表取締役社長 嵜本 晋輔
事業内容 ブランド・貴金属・骨董品等の買取及び販売
東京オフィス 東京都港区港南1-2-70 品川シーズンテラス 28F
大阪オフィス 大阪府大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪 タワーA 16階
資本金 2億4,660万円
従業員数 339名(2016年8月末現在)
売上高 219億円(2016年度8月期実績)
415号(2017/05/10発行)9面