第33回 相場の『理由』を把握しよう
古物市場の落札結果を調べていると、同じモデルであっても落札値に幅があることがほとんどですね。例えば、ロレックスのRef.16233ですと25万〜38万円くらいと結構大きい開きがあります(2017年4月時点の中古相場)。
保証書や箱等の付属品の有無や、傷や故障といった状態の違いがあるから当然なのですが、一言に「状態が違う」といっても、どういう箇所がどれだけ値段に影響するのか、実は意外と知らないという方もいるのでは。
今や落札相場サイト等で手軽に相場を調べられますが、商品の状態によって"なぜその値段になるのか"把握しているのとしていないのでは、市場や買取店でのバイイングに差がつきます。
例えば、腕時計の状態でチェックするポイントとして分かりやすいのは「ブレスレット(コマ数、伸び)」そして「機械不良」でしょうか。今回は先ほど挙げたロレックスRef.16233を例にお話しますが、どのブランドの腕時計であってもこの辺を必ずチェックしましょう(他にも文字盤の変色やガラスチップ(欠け)等、ポイントはありますがまた別の機会に)。
"コマ数"に関しては、いわずもがなフルコマ(新品販売時と同数)状態が望ましいですよね。16233であれば24コマがフルですから、数が足りなければその分値段は下がります。フルコマから1コマ足りないくらいであればさほど値段に影響ありませんが、極端に短いものだと1万〜2万円程度は減額します(当然、金無垢のブレスレットであればより値動きは大きいです)。
重要なのが"ブレスレットの伸び"。伸びとは、使用や経年劣化によってブレスがたるんでしまうこと。特に、16233のようにコマ数の多いブレスレットはベルトが伸びやすく、古物市場では写真のような状態になっているものもザラにあります。伸びきっているブレスは交換が必要なため注意が必要です。ブレスの伸び具合を判別する簡単な方法は、腕時計のリューズ側を下にして真横から見たときに、ブレスが水平に対してどれくらい下がるか見ます。
使用により伸びてしまったブレスレット
伸び具合に応じて値段が下がりますが、写真の状態であれば、中古Aランク品の相場から8〜10%程度減額といったところでしょうか。これはバイヤーの感覚によるところもあり「コレ!」といった絶対基準はありませんが、私の経験上、どの市場でも概ねこのくらいの相場感だと思います。
"機械不良"はもちろん要チェックです。特に、近年は以前と比べて市場のメーカー部品流通数が減っており、メンテナンス費が高額になりがち。そうした背景もあり、バイヤーがシビアに見ているのが「リューズ不良」。カレンダー切り替えができない"段なし"や巻き上げが異常に重い場合、リューズはもちろん内部機械の交換が必要となる場合があるため、万が一見落として買ってしまうと手痛い出費を覚悟しなければいけません。
これらは値付けに必要な情報のほんの一部ですが、それでも頭に入れて落札相場サイト等のサービスと組み合わせて使えば、より精度の高い値付けができるようになると思います。大切なのは、機械的に相場を丸暗記するのではなく、「こういう状態だからこの値段が適正」という相場の因数分解ができるようになること。なぜその相場なのか、理論と感覚で把握できれば、市場でのバイイングはもちろん、お店で一般のお客様に説明するときにも活きてくるはずですよ。
齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ
執行役員 兼 オークション事業本部 本部長
Profile
グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。
416号(2017/05/25発行)17面