第34回 国内ブランド古物市場の景況感
バイヤーorセラーたるもの、国内外のさまざまな場所から情報をキャッチして最新の古物相場を把握するよう努めてらっしゃると思います。とはいえ、お店の営業と掛け持ちしていると「生きた情報」をなかなか拾いにいけないなんて方もいるのではないでしょうか。そんな方のために、今回は2017年6月現在のブランド古物市場の景況感をお伝えします。
まず、今現在ブランド古物市場は全般的に"活況"であるといえます。カテゴリ別にみても時計、宝石、バッグそれぞれ相場感もよく、バイヤーの買い気も十二分です。特に買い気の面では(あくまでひとつの目安に過ぎませんが)当社が主催する「RKグローバルオークション」の商品落札率は2017年に入ってからは常に92%の高水準を維持しています。
2017年は、昨年に比べると経済不安を煽るようなニュースが少ないことが相場の好調に影響しているのかもしれません。為替は円安基調が続いていて、中国を始めとするアジアマーケットの市況が好調な点もポイントですね。
カテゴリ別に振り返ると、「腕時計」は5~6月にかけてやや円高に為替が振れたことで、ロレックスのスポーツ系を中心に、相場は一時"様子見"とでもいうように踊り場にさしかかっています。ただし、大手業者を筆頭に好調な国内小売り販売に押される形で、人気ブランドの良コンディションは高い相場が続いています。露出が増えるシーズンにつれて主張の強いモデルの人気が高まってくるため、パネライやウブロ、ロレックスのダイバーズモデルはいまが旬といえます。
さらに、バーゼルワールドで発表された新作がそろそろ国内の古物市場にも流れてくる頃合いです。今年はロレックスの通称「赤シード」を始め、ユニークなアイテムが注目を集めているから相場は上がりそう。最近は型番が5ケタのロレックス(16520、16610等)=セミ・ヴィンテージとでも呼ぶべき少し前のモデルの相場が以前にも増して上昇しています。ロレックスの新旧モデルを中心に、腕時計相場はまだまだ勢いづきそうです。
「宝石」は、昨年の今ごろは相場が落ち込んだものですが、今年は色石もブランドジュエリーも伸びてきています。国内外のジュエリーショーが盛況だったことで、ルビーやエメラルドはもちろん、ブランドジュエリーに関してはいまが高止まりじゃないかと思うくらいに相場が上がっていますね。中国圏やインド圏の経済がふたたび持ち直してきている点が好材料と捉えられているようです。"プチ宝石バブル"とでもいうべきこの状態がいつまで続くか、6月下旬に控えている香港のインターナショナル・ジュエリー・ショーが試金石となりそうな気がします。
「バッグ」も昨年の秋頃から相場は好トレンドが続いているのが特徴。例年、4〜5月あたりから革物の相場は下がるものですが、今年はその兆候は見えませんでした。とはいえ、夏本番の7~9月はどこの市場もバッグ相場は一服してしまうでしょう。おそらく向こう3ヶ月ほど古物市場ではバッグの出品数自体も減り、よほどの特品でなければ定番ものや、まして定番のBランク品などはニーズが一気に減ると思います。革物バッグは売りぬくには難しいシーズンにさしかかってきますが、逆にいえば買い時でもありますね。長いスパンで商売を考えるなら、今は仕入れに集中する時期と割り切ってもよさそうです。
齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ
執行役員 兼 オークション事業本部 本部長
Profile
グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。
418号(2017/06/25発行)17面