フィリピン出店が成功した秘訣
国内の引越業者などから引き取った中古家具や家電をフィリピンに輸出しているリトルガレージ(愛知県豊橋市)。月間40フィートコンテナ8~10本をフィリピンに輸出する。3年前ケソンシティーに出店した総合リサイクルショップは、現在現地スタッフ7名のみで接客や在庫管理、売上げ管理などすべての業務を行っている。売り上げは平均月商70万ペソ、約170万円と安定している。
「このなかで店の商品を不正に持ち出し、泥棒した者は手をあげろ」ある日の朝礼で松岡隆代表は、スタッフにこう切り出した。
1年間任せていた日本人スタッフから引き継いだフィリピンの店は、想像以上にぼろぼろだった。約10人雇用していた現地スタッフは、無断欠席・遅刻は当たり前。それに加え店の商品を持ち出し転売、生活費に充てている者までいたのだ。危機感を感じた松岡代表は、まずスタッフの仕事に対する考え方を変えることから始めた。
「私が質問すると全員が手をあげたんですよ(笑)。フィリピンでは大勢の前で個人を叱ることは文化的にタブー。知っていましたがあの時だけは、個別ではなく全員の前でそれぞれを叱りました。一人ひとりから1ペソを集め、『あれは俺が1ペソで君たちに売ったものだ。全部チャラにして、ここからもう一度やり直そう』と声を掛けたんです。あそこまで厳しく言ったのは、後にも先にもあの時だけですねa」
フィリピンで働くスタッフたち。仕事にも熱心に取り組んでいると言う
次の壁は数字。特に「マイナス」の概念を教えることに苦労したと言う。フィリピンでは就学率がまだまだ低く、スタッフの中でも満足に勉強できる環境にいた者はほとんどいなかった。「『3-5=?』と聞いても、『-2』という答えが出てこないんです。無いものの表し方を知らない。だから売り上げがマイナスになったらマズイと言うことも、分からないんですよね」。経理担当のスタッフから優先的に、絵や図を用いて徹底的に教え込んだ。「リンゴやバナナの絵を使ってマイナスだけでなく、割り算や平均値の出し方など店舗運営にかかわる算数を根気強く教えました」
しかし郷に入れば郷にしたがえ。フィリピン文化の良さは残し、現地のお客から愛される店作りにこだわった。たとえば食事。現地ではお客が店にランチや差し入れを持ってくることが多い。「すると、スタッフはその場で広げて食べ始めるんですよ。日本ではびっくりですよね(笑)。しかしフィリピンでは当たり前、他のお客さんがいれば声を掛けてピザやお菓子をふるまっています」。
3階建てのビル全てのフロアで展開
店を繁盛させるには、販促も大切だ。まず、松岡代表自ら道端でビラ配りを始めた。「その時見ていたのは靴。ケソンシティーは裕福な人、貧しい人が混ざっているエリア。サンダルや草履を履いている人より、靴を履いている人はお金を持っているはず。優先的にビラを配ればいいんだと気づき、スタッフとも共有しました」。ただむやみにビラを撒くのではなく、地図にエリアを記録、時間帯もずらして効果を検証しながら業務にあたるよう指示している。
419号(2017/07/10発行)10面