第35回 古物市場間の転売は儲かる??
いまや全国津々浦々に存在するブランド古物市場。自社商圏の大きな市場だけに集中して参加している方もいれば、全国を股にかけて市場からまた別の市場へと忙しく参加されている方もいるかと思います。
これだけ市場の数が増えている今、卸売りや小売りとはまた異なる儲け方を考える方もいるかもしれません。市場で買った商材を、すぐにまた別の市場に出品して利ザヤを稼ぐ・・・いわゆる「市場間の転売」。これって、いまのブランド古物市場で成り立つものなのでしょうか。
結論からいえば、基本的に「儲からない」あるいは「割に合わない」と思います(なんだか、最初から話の腰を折るようですみません)。というのも、いま現在のブランド古物業界は「相場情報の広範化」と「値段の高騰」という、二つの状況に挟まれているからです。
まず、相場情報の広範化については、ECや相場検索サービスといったインフラの発達から、誰しもが簡単に相場を調べることができるようになりました。それによって、どの市場でも相場が大きく値崩れすることなく、全国で相場が均一化しているのが当たり前となってきています。昔は、小さな平場などであれば相場よりも安く買えたりして、その商材を大会市場に売りさばくことで利益を得る"ハタシ"と呼ばれるバイヤーもいました。
しかし、いまはどの市場でも相場はほぼ変わりません。おまけに最近は小さな市場にも大手の強いバイヤーが参加するようになりましたから、そうそう値崩れすることはないでしょう。そもそも、いまは商材がどんどん海外へ売られることが多くなり、国内の市場は出品商材を取りあっている状態で、平場や小さな市場には荷が集まりにくくなっているとも聞きます。値段は相場並みで、荷も少ないとなれば、昔のハタシのような儲け方は難しいでしょう。
さらに、値段の高騰も転売を難しくしている要因です。先に国内市場は商材を取りあっていると伝えましたが、それは小売店や買取り専門店も同じです。いまはリサイクルショップが激増したことに加えて、メルカリやヤフオクを筆頭に、フリマアプリ等のCtoCマーケットが活発化しており、どのお店も商材を求めています。結果、個人のお客様からの買取りであっても、以前なら考えられない高い値段をお店がつけることもあります。すると、必然的にその商材を市場に出品したときの値段も高くなりますよね。
近頃は市場に出品する際は指値を入れておいて、希望の値段を下回る場合は売らない場合が多く、以前に増してシビアになってきている気がします。こうなると、安い相場で仕入れるのはなおのこと難しいですよね。仮に相場とトントンか多少安く仕入れることができたとしても、別の市場に出品する手間と手数料を考えたら割に合わない気がしてきませんか。
古物市場の飽和と相場情報の広範化で、昔のようなやり方で儲けることは年々難しくなってきているといえます。一方で、SNSやスマートフォンの普及で型にとらわれない新たなビジネスモデルも増えていますから、相場観を養いながらも、そうしたサービスに目を向けていくほうが儲けの近道かもしれません。
齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ
執行役員 兼 オークション事業本部 本部長
Profile
グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。
420号(2017/07/25発行)24面