《着物リサイクル春夏秋冬》第223回 日本博 旗揚げ式
2019年04月08日
▲東京山喜 (店名・たんす屋) 中村 健一 社長
1954年9月京都生まれ。77年 カリフォルニア州立大学ロングビーチ校留学、79年 慶応義塾大学卒業。同年東京山喜入社、87年 取締役京都支店長、91年 常務、93年 社長に就任、今に至る。
オリンピックを機に日本全国で開催
日本文化を発信する一大イベント
3月3日の日曜日、東京半蔵門の国立劇場大劇場に於いて、文化庁、及び独立行政法人日本芸術文化振興会の主催で、「日本博 旗揚げ式」が盛大に挙行された。私は「チームj-culture2020」のリーダーとして招待を受けて参加させて頂いた。「culture2020」は、本コラムの第208回で詳細を記したが、2017年5月に農林水産省・生産局のお声掛けで立ち上がったチームである。イグサ、茶葉、花材、蚕糸という四つの農産物に基づいて、畳、お茶、お花、着物という四つの日本文化に関わりを持つ業界が一同に会し、来たるべき東京オリンピック 、パラリンピックで具体的にどのようなお役立ちと、おもてなしができるかを考えて、東京都やオリンピック組織委員会、JOC、JPCに繰り返し提案をしてきた。
縄文時代から続く
日本の美を具現化
「日本博」の総合テーマは、『「日本人と自然」-縄文時代から現代まで続く-「日本の美」』である。そしてその基本コンセプトは、次のようになっている。「日本の美」は、縄文時代から現代まで1万年以上もの間、大自然の多様性を尊重し、生きとし生けるもの全てに命が宿ると考え、それらを畏敬する「心」を表現してきた。
日本は、景観や風土を大切にし、縄文土器をはじめ、仏像などの彫刻、浮世絵や屏風などの絵画、漆器などの工芸、着物などの染織、能や歌舞伎などの伝統芸能、文芸、現代の漫画・アニメなど様々な分野、衣食住をはじめとする暮らし、生活様式等において、人間が自然に対して共鳴、共感する「心」を具現化し、その「美意識」を大切にしている。
「日本博」では、総合テーマ「日本人と自然」の下に、各分野にわたり、縄文時代から現代まで続く「日本の美」を国内外へ発信し、次世代に伝えることで更なる未来の創生を目指す。この文化芸術の祭典が、人々の交流を促して感動を呼び起こし、世界の多様性の尊重、普遍性の共有、平和の祈りへとつながることを希求している。
政府、地方自治体
民間企業が連携
更にその趣旨は「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の機運醸成や訪日外国人観光客の拡大等も見据えつつ、政府、地方自治体、民間企業、団体等が連携して、日本の美を体現する我が国の文化芸術を振興し、その多様かつ普遍的な魅力を発信することを目的とします」となっている。そしてこの「日本博」の開催時期は、2020年を中心としつつ、その前後の期間も含めて幅広く展開する予定、という事であった。
つまり「日本博」とは、来るべき東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、「縄文から現代」の「日本の美」を体現する美術展・舞台芸術公演・文化芸術祭等を「日本人と自然」という総合テーマの下、四季折々・年間を通じて全国で展開するイベントのことである。そしてこれは文化庁と日本芸術文化振興会がリードして、政府、地方自治体、民間企業、団体等も連携して開催する一大イベントである。
この度の東京オリン ピック・パラリンピックの開催目的の一つが「日本文化の魅力発信」と明文化されていたが、この「日本博」こそが国内外に日本文化の魅力を発信する為の具体的なイベントなのである。
羽織にイルカの家紋
日本博の旗揚げ式のオープニングは、林英哲さんと英哲風雲の会による大太鼓合奏曲「七星」で、和太鼓の大音響が腹に響く素晴らしい演奏であった。冒頭の挨拶は、内閣官房長官の菅義偉氏に続いて文部科学大臣の柴山昌彦氏、そして東京オリンピック・パラリンピック担当大臣の桜田義孝氏であった。特に柴山文部科学大臣の"日本の文化力と移り変わる四季を感じて感動する日本人力"という言葉は印象に残った。その後のトークセッションには、歌舞伎役者の中村扇雀さんと尾上菊之助さん、フリーアナウンサーの木佐彩子さん、そして文化庁長官の宮田亮平さんであった。
宮田亮平さんは羽織はかま姿で登壇されていたが、羽織の家紋は金工作家としても知られる自身の代表作「シュプリンゲン」からとって、イルカにされていたのが楽しく印象的であった。また、尾上菊之助さんがシェイクスピアの「十二夜」を歌舞伎にしてロンドンで公演して大成功された話には、日本文化と日本の伝統芸能の新たな可能性を感じることができた。
文化庁長官の宮田亮平さんのリードの下に来るべき東京オリンピック・パラリンピックを大きなチャンスととらえて、「チームj-culture2020」と「チーム着物2020」のチームリーダーとしてこの「日本博」にも積極的に関わっていきたいと強く思った。我々、リユース着物「たんす屋」も日本文化発信型着物屋として扇のかなめに着物を据えて、着物を着ての日本文化体験を通して、日本文化の魅力発信の一翼を担って行きたいと願っているが、いかがだろうか。
第460号(2019/03/25発行)18面