マッシュルーム、1650万のデニムが買われた
2022年12月18日
ヴィンテージ古着店のマッシュルーム(新潟県西蒲原郡)が売りに出していた1650万円の1873年製のリーバイスのジーンズが10月、米国人古着ディーラーによって購入された。円安が大きな理由だ。同店社長によれば、米国現地ではいわば資産としてヴィンテージ古着が取引される動きがあり、同ディーラーはその目的で買い付けたと見ている。
円安で米国人ディーラーが
米国の若手富裕層が関心を示しているという
米国から再び米国へ
同ジーンズは土田鏡社長が2年ほど前に「日本の古着屋でまだどこもやったことのない挑戦がしたい」(同氏)といった背景から、大金をつぎ込んで米国人ディーラーA氏から買い付けたもの。その話題性でメディアからは多数取材を受け、富裕層も含む国内の様々な客が同店まで見物に訪れたが、購入者は現れなかった。そのタイミングで急激な円安が押し寄せ、以前から取引関係のある米国人ディーラーB氏に売却したという流れだ。買い付け時には1ドルあたり100円台だった円も、売却したこの10月には140円台に突入していた。「やはりまだ日本では古着をいわゆる美術品・骨董品として捉える潮流はなかったようだ」と土田鏡社長は素直な感想を漏らす。来年の2023年はリーバイスのブランドの誕生150周年にあたり、土田社長によれば、購入した米国人ディーラーB氏も来年に同ジーンズを再販する可能性が高いという。
歴史を追う文化
米国では一部の若手富裕層が超ヴィンテージ古着に興味を示しているそうだ。ファッションへの関心が入口となって、新しい時代の美術品として同古着を好む動きが2022年ごろから広がっているという。「米国やヨーロッパには徹底的に歴史を追う文化がある」と土田社長。世界で初めてジーンズが生まれた年にあたる1873年製という価値は、そうした歴史を尊重する富裕層に強く響いている。一方で、サザビーズ等のオークションで競売されるレベルの品々と比べたら安価であり、加えて同古着に対する世間の関心が米国内でもまだ醸成されていないという点などから、高騰や暴落といった価値の変化は予見できない状況だ。
第549号(2022/12/10発行)20面