リサイクル通信
ダーツの旅 ~鹿児島県 編~
ダーツの矢がささったエリアのリサイクルショップに取材するコーナー。
渡辺商会出水店
元整備士の遺品は特攻機零戦の残骸
渡辺商会出水店(出水市五万石町)は人口約5万6千人の市にあり、お客は地域の高齢者が多い。
昨年、ある高齢女性から「夫が亡くなったので、納屋を片付けて欲しい」という依頼があった。現場に出向いたところ、納屋には埃をかぶった軍服、ガスマスク、大きな車輪、機械や計器類、何かを覆っていたと思われる楕円形のガラスの一部があった。聞けば90歳で亡くなった女性の夫は飛行機の整備士だったと言う。
渡辺商会 出水店 店舗外観
ただのガラクタのように見えたが、渡辺純代表はネットや本で時間をかけて調査し、それらの遺品について調べてみた。するとガラスの一部は日本海軍の主力戦闘機「零戦」のコックピットを覆っていた風防の一部であり、車輪も零戦のものであることが判明した。
第二次世界大戦末期、鹿児島にあった知覧基地では、敵の母船に体当たりする『必死』の特攻作戦が行われ、400名を超す若者が出撃して行った。おそらく女性の夫は知覧基地で、零戦の整備をしていたのだろう。
「戦後70年間、その一部を所持して来られたご主人の心情を思うと、遺品は価値のわかる方に橋渡ししなければと考えました」と渡辺代表。
零戦の残骸は軍事用品に詳しい知人の手を介してオークションに出品され、10万円を超える価格で落札された。
渡辺商会出水店
渡辺純代表
390号(2016/04/25発行)19面