65歳以上の高齢者への優遇金利や、完済後1ヵ月以内に再度来店した場合にも優遇金利にする「カムバックキャンペーン」など、ユニークなキャンペーンを展開している須賀質店(東京都品川区)。そのアイデアはどこから生まれるのか、秘訣を聞いた。
バナーに高齢者のイラストや招き猫などを使い親しみやすさを出している須賀質店のホームページ。
赤・緑・青など、どぎつくなりすぎない明るい配色をこころがけている
再来店したお客に金利を優遇する「カムバックキャンペーン」を展開している須賀質店。
「質店とカムバックという言葉はあまり噛み合わないですよね。でも『何で質屋でカムバックなの?』と明るく笑ってもらえることが狙いなんです」。そう話すのは須賀質店代表の須賀兼一さんだ。
これはすでに同店で借入れしている1契約を完済しているお客で、同じ品物で再度質入れする場合に適用されるもの。「カムバック」という前向きな言葉を使うことで、質店を利用する後ろめたさを払拭したい思いを込めている。
「まだまだ『質店でお金を借りるのは恥ずかしい』と思っている方が多い。そこを誰にでも利用していただけるような明るいイメージのキャンペーンを考えています」
実はこのカムバックキャンペーンは若手社員から出たアイデア。オンラインゲームでしばらくログインをしていなかったプレーヤーが戻ってきた時、アイテムなどがプレゼントされるサービスをヒントにしている。
須賀さんはこうしたアイデアがないか、常に考えている。65歳以上の高齢者向けキャンペーンも他業界でシニア向けサービスが充実しているのを見てひらめいた。
また、高齢者は金融機関から融資を受けにくいことから、社会的に弱い立場にいる人を助けたいという思いもあった。
「私は仕事のことを考えているのが一番幸せ。道楽ではなく、働楽だと思っています」
紹介キャンペーンではお客に配慮
同店では他にも「新規お客様紹介」キャンペーンを実施している。紹介してもらった新規のお客が契約した場合、質契約金額が1万〜3万円未満の場合は1000円、3万〜10万円未満は2000円、10万円以上は3000円、紹介者にキャッシュバックする。
「しかし、知人に質店に行ったことを知られたくないお客様もいます。非常にデリケートな問題なので配慮が必要です」と須賀さん。
来店のキッカケで「知人の紹介」に○を付けてもらった新規客にキャッシュバックキャンペーンがあることを伝えるが、紹介者名を「言いたくない」と言われた場合はそれ以上触れない。教えてもらった場合は店舗から紹介者に連絡をとり、指定口座に入金をしている。
「質店ではキャンペーンのアピールの仕方もよく考えて行う必要があると思います」
金利優遇に加えHPも親しみやすく
どのキャンペーンも金利を優遇するスタイルをとっている同店。それが利用者の一番のメリットだと考えているからだ。
「高齢者キャンペーンを行ったことで、客層における高齢者の割合が7.2%から1年後には8.9%と微増しました。ただ、それだけで来店していただいているのではなく、ネット検索で、ホームページ全体の雰囲気を見て選んできていただいていると思います」
ホームページでは明るく、楽しい雰囲気を出しながらも金融業としての信頼感もアピールできるよう、配色に気を配っている(写真参照)。
須賀質店(東京都品川区)
代 表/須賀兼一
創 業/1920年(現代表の須賀さんの祖父が創業)
従業員数/4名
備 考/須賀質店は五反田本店の他に渋谷店、池袋店の都内3店舗を展開している。
【プロフィール】
51歳。東京都出身。成城大学卒業後、大手不動産仲介会社に入社。38歳の時、実家の須賀質店を経営していた父親が倒れたのをキッカケに家業を引き継ぐ。何をしていいか分からない状態だったが、同業者や市場関係者から教えを受けながら事業を拡大。「実際やってみたら面白く、今では質店は天職だと思っています」と須賀さん。6年前から週2回、スポーツクラブで1時間半泳いでいる。体調管理にも役立っているが、「へとへとになって帰ってくると、パッとアイデアがひらめくことも多い」(須賀さん)と、頭を真っ白にする時間をつくっている。
405号(2016/12/10発行)10面