Interview
今年6月、ブランドオフ(石川県金沢市)が大黒屋HDに買収されると日経新聞が報じた。その後、大黒屋HDもIRで資本業務提携に向けた覚書を締結することを決議したと発表した。2社が組めば、中古ブランド業界のトップに躍り出る可能性もあり業界内外の耳目を集めた。その後、提携はどうなったのか。ブランドオフの安山勉社長に聞いた。
ブランドオフ 安山勉社長
今を表す言葉は「チェンジ」
−−6月に、大黒屋さんとの資本業務提携を協議していると報道されました。その後どうですか。
相手が上場企業なので、秘匿義務があってまだお話できないんです。
−−分かりました。では、提携しようという話になった経緯を教えてくれますか。
大黒屋の小川さんとは10年くらい付き合いがあって、何年も前から一緒に世界一になろうという話をしていたんです。大黒屋は、中国のCITICという金融や質事業を展開する企業と提携していたり、資金調達力がある。一方でブランドオフも、海外で展開してきた経験があるし、オークションの運営もしている。お互いに持っている物があるから、手を組んでやろうかと。
−−ブランドオフが苦戦しているからじゃないかという憶測もありましたが。
色々言われましたよ。潰れるから大黒屋に身売りするんじゃないかとか(笑)。うちは確かにインバウンドで失敗しました。ヤマダ電機と組んで外国人向けの大型店を出したりガンガンいってそれが裏目に出た。だから不採算店を閉めて、在庫も売り切って整理をしてきました。それがようやく終わるところです。1年半かかったけど、きれいになった。だから、そういうネガティブな話じゃなくて、単純に一緒に世界を目指そうという話だったんです。
−−さっき、オークション会場も拝見しましたが活気づいていますね。
そうなんです。先日、金沢のブランドオークションの10周年の大会があってこれも大盛況でした。1万3000点の商品が集まって、約9億円の出来高となりました。うちは銀座のオークションなども含めて、月間16億とか17億とかやっていますよ。
銀座で主催するオークションも活況
イオンの中にオムニチャネル店
−−店舗の方はどうですか。一端閉めたと言っていましたがその後は。
実は、当社のFC店を展開しているグループ会社を通して、イオンの中に買取りと取り寄せのための店舗を試験的に出店しています。ここ数ヶ月で、福岡、神戸、大阪に合計4店出しました。
−−出足はどうですか。
いいですよ。今までのブランドオフと全く違う傾向の店で。大きなお店じゃなくて10坪とか15坪くらいの大きさ。
−−なぜ、小型店を。
結局うちが失敗したのって、高い家賃の場所に在庫をたくさん置いてやったという所。その教訓で、在庫の共有化を進めていこうと思って。ネットで商品を見て、店舗に取り寄せて実物を見て購入するオムニチャネルですね。今までうちのネット比率って全体の5%程度だったんです。実店舗が95%を占めていた。でも1年前からこれをやることで、30%までネットの比率を上げることができるようになったんです。
例えばうちのネット単価っていうのは3万円なんです。ところがバーキンとかロレックスみたいな高額なものになると恐くて、ネットで買えないっていう人がまだいっぱいいて。ネットの商品を店舗に取り寄せてから買った商品の単価って15万円なんです。
−−単価が5倍にもなるんですか。店舗で実物を見て触って確認できるというのは大きいんですね。
この後も、大手ディスカウントストアとか色んなところの中でやる予定です。
ブランドオフFC、海外で展開
−−最後に、今のブランドオフを一言であらわしてもらえますか。
一言で言うと「チェンジ」。さっきもお話しましたが、今まではインバウンド用に高い家賃で、高い在庫をいっぱいお店に揃えているというのが旧来のブランドオフでした。
今後は、在庫共有型、ネットの活用、オムニチャネルというところを強化していかないと生き残れない。ですから、高い家賃で従業員をそろえて販管費ドカン、というのは、もう1年前からチェンジしている。これをもっと推し進めていって、店舗50対ネット50にするのがまずひとつです。
あとは、自分たちで全部完結していたものを、日本も海外も含めて同業者と提携しながら推し進めていく。タイ、韓国、アメリカで対話をしているところです。
−−どんな形の業務提携ですか。
例えば、ブランドオフのFC化を海外で推し進める。創業25年の、オークションやリアル店舗のノウハウを、抱えていたものを惜しみなく出せるような体制にしたい。
−−ブランドオフは独自路線の強化に入っているように感じました。大黒屋との資本業務提携、果てしてどうなるのか。結論を楽しみにしています。
426号(2017/10/25発行)9面