骨董買取の技法 第8回
東山魁夷など高価な5人覚えて
ホテルに泊まるとよく壁に額が掛けられていますが、そのほとんどはエディションが付けられた、リトグラフやシルクスクリーンと呼ばれる版画類(木版も含む) です。ホテルや飲食店などに掛けられている『版画類』は美術品的価値のあるものは少なく、ほとんどがインテリア的なものです(一部の高級ホテルや飲食店などは除きます)。
片山球子の版画「赤富士」
ひと昔前の富裕層の家には重厚な油彩の絵画が掛けられていたものですが、今のタワーマンションやホテルのインテリアには重厚な油絵は合わず、リトグラフなどの版画類が好まれます。では、どのような版画類が高価なのでしょうか?版画の場合、『版画家が制作する版画』と『画家が自分の本画を基に制作する版画』の2通りあります。前者で有名なのは、棟方志功など。
後者の場合は、ほとんどの有名画家が版画類を販売しています。勿論、原画提供で作家本人が彫ったりすることはありません。今回はこちらについて話をしたいと思います。
まず、日本画家の版画類です。本画と違い数十万円で買えるものが多いので、個人宅は勿論、法人の買取から出てくることもあります。高価な次の5人は是非、頭に入れておいてください。
① 東山魁夷 ――― 風景画家。道や残照などの前期の代表作や馬などがいる風景は高価。
② 平山郁夫 ――― 駱駝のキャラバンが高価。東大寺、銀閣寺なども人気があり。ただ水彩が原画の作品は安い。
③ 片岡球子 ――― 赤富士などの富士山関係の作品が高価。(富士山の形に特徴があるので画像検索して是非、覚えて下さい!!)
④ 加山又造 ――― 猫や凝った技法の作品は高価。裸婦で単色っぽい作品は安い。
⑤ 千住博 ――― 現在も活躍する作家。ウオーターフォールという滝の作品は高価。大和(奈良)をモチーフとした作品も人気。
洋画家では、藤田嗣治が高価です。藤田は女性・子供・猫などのモチーフが人気です。ただ作品自体が古いので、それほど出てくることはないかもしれません。現存画家では、絹谷幸二は高価です。特徴があるので、一度見ておくことをお勧めします。著名なのは、ベネチアや富士です。また、南瓜の絵で著名な現代アートの草間彌生は、まだ旬です。
外国人で比較的見かけるのは、古いところでは、ピカソ・ミロ・マチスなど。ダリは偽物が多く出たため、あまり高くありません。また、ビュッフェは、初期はまだ高いですが、少しカラフルなものは、下降気味です。現存作家では、カシニョールなどは、比較的高価です(カシニョールの作品は、数十年前お土産品として販売されていたそう)。また、現代アートのウォーホルの版画は、数千万円するものもあります。
尚、版画類の価値は状態にかなり左右されます。焼けやシミの作品は要注意です。また、冒頭に述べたようにエディションのある工芸印刷との区別も必要です。
藤生 洋
<プロフィール>
昭和42年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、ロッテの財務部で勤務。サラリーマン時代から骨董市に通う。歴史好きが高じて平成11年、31歳で起業。ネットオークションや骨董市で骨董品の販売をはじめる。平成13年には「(有)北山美術」に改称。平成24年には骨董の業者間オークション「弥生会」を3社共同で立ち上げ、会員数200社の規模に拡大する。現在は店舗と事務所を東京・千葉・札幌に展開している。骨董店での修行無しに独自に事業を軌道に乗せた手腕が話題になり、 2冊の著書を上梓。
385号(2016/02/10発行)4面