オークファン、在庫廃棄の「勿体ない」を救う
2018年11月09日
・BtoC在庫処分サイト「Otameshi」が好調
・販売額の数%を社会活動団体へ寄付する仕組み
・今後はPRに集中投資し、ユーザー規模拡大を目指す
相場検索サイト運営のオークファン(東京都品川区)が、従来のデータ企業から「在庫流動化支援」企業への脱皮を図っている。毎年企業から22兆円分が廃棄されるという商品在庫に焦点を当て、同社の有する680億件の商品実売データを活用して行く戦略だ。2017年から子会社シナビズが展開するB2在庫処分サイトOtameshiが好調。成長の軸に位置付ける。
在庫廃棄の「勿体ない」救う
カゴメなど大手も利用するBtoC EC
Otameshiでは出先の無いメーカーの余剰在庫やパッケージ変更商品を消費者向けに販売する。商品はオークファンが買い取り、ECサイトを通じて販売する。最大の特徴は、販売額の数%を社会活動団体へ寄付する仕組み。購入時に消費者が寄付先を選択することができる。
従来、滞留在庫の消費者向け販売はブランド毀損の観点から敬遠される向きがあったが、この仕組みにより企業のイメージアップにつなげることができる。また、マス・マーケティングでリーチできない層に社会貢献の切り口から利用を促すPR効果や余剰在庫の収益化につながることが期待される。
他サービスを活用し ている企業の口コミや各種メディアで取り上げられるなどの影響を 受け、2017年7月のローンチ以降、毎月流通額が倍増しているという。具体的な金額は明らかでは無いが、すでに収益化も達成し ている。
「3分の1ルール」解決の手段に
現在はカゴメや明治など、食品関連の大手メーカーからの出品を中心に拡大している。日本の食品業界には「3の1ルール」と呼ばれる商習慣があり、食品ロスを生み出す課題として問題視されている。これは食品の製造日から賞味期限までを3分割し、メーカー・流通・小売それぞれに納品・販売期限を設ける習慣だ。
この期限を過ぎると返品や廃棄処分となり、その量は年間600万トンにも及ぶ。「まだ利用できるものが一律に廃棄されるのは大きな損失。必要としている所へ届ける仕組み作りをしていく。今後はPRに集中投資してユーザー規模拡大を目指す」(河田加奈社長室)。
▲Otameshiを担当する社長室の河田加奈氏
「在庫流動化」へ 必要な機能整えた
オークファンはネットオークションや国内外のECサイトを通じて収集した価格データを機械学習や統計処理を用いて分析し、相場情報を提供することで 事業を拡大してきた。ここで蓄積した680億以上の実売データとその解析・活用ノウハウを利用した次なる成長フェーズに「流通プラットフォーム」を定めた格好だ。
食品在庫ロスは氷山の一角。同社によると、国内の法人在庫廃棄損の規模は年間22兆円に及ぶという。在庫流動化支援業への脱皮を図り、同社はM&Aを重ねて一次流通と二次流通、B2BとB2Cの各流通チャネルを揃えてきた。B2Bのプラットフォームとしては2015年に一次卸の売り手と買い手をマチングするNETSEAを、2016年には滞留在庫の買取や返品受付を代行し、処分先としてリサイクルチェーンや海外の業者に販売するリバリューを子会社化した。
昨年からは新たにB2Cのチャネルを展開。2017年開始のOtameshiに続き、2018年1月にはネットプライスを連結し、会員数250万人のECサイト「net price」を得た。各チャネルを整備するための投資フェーズを終え、今後は成長加速のフェーズに入るという。2020年9月期には連結売上高105億円、連結経常利益15.6億円の達成を目指す。
第450号(2018/10/25発行)20面