《仕事ができる人の1日》チカラ・ボタン、鵜飼睦子さん
2019年10月05日
お直しは技術の仕事ではなく「サービス業」
高い技術と丁寧な接客で、お客様が喜ぶお直しを
▲チカラ・ボタン 鵜飼睦子さん
東急ハンズに入社し、約13年間勤務。体調を崩し、体力的な不安から趣味を活かした仕事ができないかと、洋服お直し店などで十数年間、修行を積む。2010年、自宅アトリエで、お直しの仕事とお直し教室をスタート。2014年菊名に「洋服お直しアトリエ&教室 チカラ・ボタン」をオープン。2015年、菊名の店舗を閉店し、自宅アトリエを再開した。アパレルメーカーからの受注製作やレンタルウエディングドレスの修理、障がい者を対象にした指導も行っている。
お客の希望通りに
一着入魂のお直し
鵜飼さんがお直しをする上で大切にしているのは、一着ごとに最善を尽くすこと。「技術は必要ですが、お客様の希望通りでなければ意味がありません」と鵜飼さん。丁寧に話を聞き、引取りの時にも試着してもらい、着心地を確認してもらう。
お客の半数がリピーターで、他店で断られたり、他店で直してもらったものの納得がいかずにここに持ち込むお客も多い。
鵜飼さんはカルチャーセンターで1日講座も開いている。人気は手縫いのルームシューズ。着なくなったTシャツやセーターからリメイクする。「リメイク講座はライフワークとして続けたいです」と話す。
通いやすい
お直し教室が大盛況
お直しは高度な技術を要求される一方、賃金が安く、お直しだけで一本立ちするのは難しい。
鵜飼さんが成功しているのは、お直しの教室も一緒に行っていることが大きい。今は売上げの6割が教室と、お直しの売上げを逆転している。
教室は午前と午後の1日2回。1回につき2名までの予約制で2時間3500円。自分の直したいものを持参してもらうので、鵜飼さんが材料やテキストを用意する必要がなく、直前まで自分の仕事ができる。生徒にとっても、自分が直したいものを教えてもらえるので、無駄がなく実に効率がいい。
現在、休み以外はほぼ毎日教室の予約がある。生徒は洋服好きの人、既製服が合わない体型の人の他に、お直し店で働くプロが習いに来ることもある。「高齢化で引退する技術者が増え、若い技術者が育ちにくい環境になっているのが心配です」と鵜飼さんは話している。
▲鵜飼さん監修の手縫いにこだわったお直しの本(2014年刊)。6刷しているロングセラー
チャコは固形せっけん
①袖万十/袖など立体感のある部分をアイロンがけするのに使う。30年以上愛用していて、継当てをしながら使用している
②せっけん/薄くなった固形せっけんを乾かして、チャコ代わりに使用(上の写真は試したところ)。滑りがよく、薄い生地にも線をひきやすい。また、霧を吹き、アイロンをかけるとすぐに消えるので、使い勝手抜群
③小さなアイロン台/アイロン熱接着テープなど細かなものにアイロンがけするのに重宝
④物差し ⑤仕上げ馬 ⑥アイロン
⑦磁石とマチ針/鵜飼さんは針山を使わず、磁石にマチ針を白5本、赤5本と数を決めて置いている。刺さなくてもいいので便利
第472号(2019/09/25発行)13面