HDD流出、「業界に波紋」同業者にも問合せ殺到
2019年12月25日
神奈川県庁が使用していたハードディスクがブロードリンク(以下、BL社・東京都中央区)元社員に転売された事件を受け、本紙は情報機器の買取販売を行う同業7社に聞き取りをした。リース企業が過剰に反応を示しているといい、今後中古市場への使用済み機器の放出減が危ぶまれる。社会からのイメージ回復が急務だ。
「お詫び」が出されているブロードリンク社HP
「ブロードリンクの管理が怠慢」
BL社は富士通リースを介し神奈川県庁のハードディスクの処分を受託。BL社元社員の悪事で18台がネット転売されていたことがわかり騒動となった。同業者への聞き取りでは、「管理が怠慢だったBL社の過失」と多くが口を揃えている。加えて影響は各社にも波及し、本件が明るみになり1週間弱で取引先から100件超の問い合わせを受けたという所もあった。同業のパシフィックネットはホームページに声明文を出し、不安視する取引先や投資家に向け施設見学の受付を始めた。
本件で浮き彫りとなった1つがデータ消去や物理破壊の相互確認の決まりについてだ。これは業界内で「請求ベース」が一般的とされており、BL社含め聞き取りした同業の多くが証明書発行を請求のもと有料で対応している。本件でも神奈川県庁と富士通リースともに請求しておらず、完了報告のみをBL社から受けていた。ではこれを、必須化すれば良いかというと現実は課題があるという。引き上げた大量のリースアップ機器1点ずつに、破壊前後の証明写真撮影や消去証明書の発行には多大な手間が掛かるとされている。
また聞き取りの中で、BL社特有の問題として指摘されていたのが機器の個体管理や勤務体制についてだった。本件ではBL社に引き上げされた機器が、破壊か消去をされる前に同社でプーリングされていた隙に元社員に抜き取られたと見ている。一般的に同業者では機器にラベリングなどをし、セキュリティルームへの移動台数や作業完了台数を把握することで、数の減少があれば気づけるというものだ。また、元社員が人気の少ない早朝に悪事を重ねていたことについて同業者から驚きの声が挙がっている。一般的にデータ消去や破壊作業は、日中の時間帯を中心に作業を許可している所が多いためだ。
今後リース企業が買取先を精選する動きは強まると予想され、中古市場へのせき止めを検討する所もあると考えられる。また一般個人に関しても、「本件により防衛意識が高まり、スマホなどの中古市場にも影響があるのでは」と話す関係者もいた。社会全体に向け、業界団体などが何らかの声を挙げるかどうか注目したい。
第478号(2019/12/25発行)1面