ジュエリー法務相談室 新田真之介先生に聴く「置き込み屋対策」
2020年04月15日
「弁護士視点から考える」
合成ダイヤ買取対策講座
~第4回 置き込み屋対策~
前回の事例(買取をした後で、合成ダイヤモンドだと判明したという相談)を読んでいかがでしょうか。「うちの店は100%大丈夫」と言える方はどれくらいいるでしょうか。これまでもさまざまな合成石や模造石、そして偽ブランド品を置き込む手口は多くありました(読者の皆さんの中には苦い思い出がよみがえった方もいることでしょう)。
そのような詐欺集団は、組織的に「弱いほうへ、弱いほうへ」流れる傾向があります。つまり、対策を怠っていると確認できた場合には続けざまに(ときには別の人に持たせて)持ち込むようです。逆に、「この店はきちんと対策しているからだませないな」とわかると、ぱったり寄ってこなくなります。
もちろん一番の対策は「きちんと合成ダイヤモンドを見抜くための技術面の研鑽を積む」ことですが、今回はそのような鑑別技術以外のソフト面で、対策できることがないか考えていきたいと思います。
入り口段階の話として、服装や要望、言動などから、(あくまで対応する際の傾向として)注意レベルを上げたほうが良い場合はあるでしょう。
もちろん若い男性でも、遺産相続などでちゃんと所有している場合もありますし、本当に予定があって急いでいる場合もあると思います。また、これらの裏をかいて「いかにもお金を持っていそうな中年女性」を装った運び屋を使っている場合もありますので、どれか1つがあてはまったら直ちに怪しいというわけではありません。ただ、これらの事情が複数積み重なってきた場合、注意レベルを上げて会話内容でなるべく入手経路について聞き取る質問を増やしたり、防犯ビデオ映像を上書きされないよう別媒体に保存しておいたりするなどの対応レベルを上げるようにすると良いでしょう。
次回は実際に「返金請求」や「損害賠償請求」を行っていくためのお話を紹介します。
新田 真之介(にった・しんのすけ)
宝飾小売店、買取店等の顧問・法律相談などを行うジュエリー法務相談室を主催する。新田・天野法律事務所、東京弁護士会所属。日本ジュエリー協会2級ジュエリーコーディネーター。慶應義塾大学法学部、東京大学法科大学院修了。
第485号(2020/4/10発行)5面