メモリーズ、失踪男性の家の片付けで「福祉整理」のニーズ実感
2020年07月09日
遺品整理ダイアリー Story10
思い出に寄りそって
不健全な住環境は孤独死の要因となります。
今回は依頼された家の片付けが結果として遺品整理となった事例をお届けします。
HPには新型コロナウィルスの正しい除染作業について解説されている
遺品整理・特殊清掃などを手掛けるメモリーズ(大阪府堺市)は、高い審査基準を満たした9社で構成される一般社団法人日本特殊清掃隊の加盟企業だ。世界トップレベルの除菌消臭ノウハウを有し、新型コロナウィルス除菌の依頼もあるが、除菌のみのサービスは受けていない。現在、同社が最も力を入れているのが、主に高齢者の自宅で作業する「福祉整理」だからだ。
「福祉整理」とは劣悪な生活環境を改善する「生きていくための整理」のことで、『福祉整理Ⓡ』はメモリーズの登録商標だ。
横尾将臣代表が「福祉整理」を推進するようになったのは、ゴミ屋敷化で自らの健康状態を脅かすセルフ・ネグレクトが孤独死の要因になっている現場を数多く扱い、「孤独死のほとんどは、亡くならなくてもいい人が亡くなっている」と感じたからだ。孤独死する人の多くは高齢者だが、なかには60歳以下のケースもある。
『福祉整理®』の重要性を公演活動でも訴求している
箱の下に埋もれた遺体
2ヵ月ほど前、同社は80代の女性から「息子のマンションを片付けて欲しい」という依頼を受けた。息子は独身で50歳位。大企業の社員で相当な地位にあったが、半年位前、急に出社しなくなり、姿を消した。捜索願を出したが見つからず、息子が借りていたマンションを片付けて、引き払うことにしたのだという。
現場に行ってみると、マンションはアニメのプリキュアシリーズのキャラクターグッズやその箱で埋めつくされており、暮らすスペースはほとんどなかった。
横尾代表はスタッフと共に部屋の片付けを行なったが、箱をすべてどかしてみると、その下から黒ずんだ物体が現れた。息子は脳か心臓の発作で倒れ、その上に山と積まれたグッズや箱が崩れて、遺体を覆い隠したというのが警察の見解だった。それが冬だったので発見が遅れたのだ。
「依頼者からは『見つかって良かった』と感謝されましたが、もし部屋が片付いていれば、すぐに発見されたはずです。一人暮らしが増える中、『福祉整理』のニーズは高齢者だけにあるのではないと認識させられた案件でした」(同氏)
プロのサックス奏者の経験を活かし、老人ホームや福祉施設などでボランティア活動を行っている
「遺品整理は精神的な別れ」と位置付けています。
メモリーズ 横尾将臣代表
遺品整理の第一人者で、テレビドラマ『遺品整理人谷崎藍子』の監修を務め、NHK『プロフェッショナル仕事の流儀』にも登場した。サックス奏者だった33歳の時、祖母の孤独死をきっかけに「キーパーズ」に入社し、2008年に独立。社名「メモリーズ」は「故人の想い出を大切に扱いたい」という気持ちから命名された。受注件数は1万3千件以上と業界トップクラス。「葬儀は肉体的な別れ、遺品整理は精神的な別れ」と位置づけ、モノから繋がりを辿って寄り添っていく遺品整理を実践している。
第490号(2020/6/25発行)19面