ゲオも参入「 オフプライスストア 」とは?リユース店との違いも解説(2023年版)
2022年12月19日
オフプライスストア が増加しています。SDGs、ゼロカーボンなどの環境配慮が世界的に求められるようになり、これまで廃棄や環境汚染が問題視されてきたアパレル企業は次々と「サスティナブル」な取組を開始しています。
特に、2020年のコロナ初期には、国民の外出自粛が目立ち、春物衣料の滞留在庫が大発生しました。その際に注目を集めたのがオフプライスストアの存在です。以降、「環境に優しい」「安くて状態が良い」などの理由から、新たなビジネスとして成長が続いています。
この記事では、新しいアパレル業態「オフプライスストア」とは?という疑問解決に向けた解説と、大手各社の情報まとめ、また、似た業態である「リユース(リサイクル)ショップ」「アウトレット」「ディスカウントストア」の違いを、わかりやすく解説します。
目次
1:オフプライスストアの特徴
1-1:ディスカウントストアとの違い
1-2:アウトレットとの違い
1-3:リユースショップとの違い
2:アメリカで広まったオフプライスストア
2-1:アメリカの大手オフプライスストア
3:オフプライスストアが増えた理由
4:国内の主なオフプライスストア
4-1:「ラックラック クリアランスマーケット」
4-2:「アンドブリッジ」
4-3:「カラーズ」
4-4:その他のオフプライスストア事業者
5:食品にもオフプライス化の波
6:オフプライスストア まとめ
1:オフプライスストアの特徴
オフプライスストアとは、何でしょうか。
簡単に言えば、「企業の滞留在庫(売れ残り)を集約し、常時割引価格で販売する小売店」と言えます。
主に衣料品を取り扱い、ブランド品からファストファッションまで扱う商材を幅広く設定する店舗が多い一方、ブランド品に特化したオフプライスストアや、低単価品に特化したオフプライスストアも存在します。
ここからはオフプライスストアの特徴を、「ディスカウントストア」「アウトレット」「リユースショップ」との比較をしつつ解説していきます。
1-1:ディスカウントストアとの違い
ディスカウントストアとの明確な違いとして、ディスカウントストアが主に卸問屋から仕入れた新品を販売するのに対し、オフプライスストアは各メーカーや卸、小売店で滞留した「売れ残り品」を仕入れ、販売するという面があります。
「ドンキ」こと、ドン・キホーテや、トライアルなど、商品を格安で販売する「ディスカウントストア」の店内を歩くうち、あれもコレも欲しくなってしまう...という経験をした方も多いのではないでしょうか。これは、話題の商品や売れ筋商品を集中して大量に配置しているためです。オフプライスストアは、こうした小売店で売れ残った商品を再活用して陳列されたものが大半です。
そのため、通常店舗の半額以下というお値打ち感を打ち出して集客を行います。ただし店によっては、安いだけではなく、ハイブランドから普及価格帯の商品まで陳列し、例えばユニクロの横にポール・スミスがあるといった具合に、ディスカウントストアとは違った買い物の楽しみを演出している店舗もあります。
1-2:アウトレットとの違い
アウトレットは仕入先が少なく、特定のブランドのみを取り扱うのに対し、オフプライスストアは複数社から商品を仕入れるため、ラインナップや商品価格が幅広い傾向にあります。
幕張や御殿場、長島、りんくうなどのアウトレットモールを回ると、看板に書かれた「ビームス」「コーチ」「アディダス」などのブランドしか、その店には置いてありません。
オフプライスストアはブランドを幅広く取り扱うため、国内アパレルブランドの大半を扱う店舗も多く、種類は数百種類に上ることも。そのため大型店を中心に、40代前後の女性をメインターゲットにしつつも、家族連れや中高生でも楽しめるMD設計になっているのがオフプライスストアの特徴です。
1-3:リユースショップとの違い
リユースは中古を取り扱うのに対し、オフプライスストアで中古を取り扱う店舗は少数派です。
オフプライスストアは、新品商品のうち「売れなかった在庫」を業者から買い取るスタイルです。これはリユースショップの「誰かが買ったもの」を買い取るのと大きく違い、単純に売るだけでは、売れる可能性が低くなります。そのため大幅な値引きを常時行い、販売につなげています。
また、リユースショップは来店客からの買取を行う一方、オフプライスストアは企業から買取を行うため、買い取るアイテムを選ぶことも可能で、また大量に仕入れることができます。
2:アメリカで先行するオフプライスストア
オフプライスストアのビジネスモデルは、メーカーや卸を行う企業から、「滞留在庫」「不良在庫」などと呼ばれる売れ残り品を買い取り、定価の半額やそれ以上の割引率で販売を行うというものです。
オフプライスストア参入を決めた国内各社からは、参入要因に「アメリカ市場の発展が著しいため」という声が上がります。アメリカでは「TJXカンパニー」「ロスストア」などの大手オフプライスストアが展開しており、小売業界になくてはならない存在。一方で日本国内には、2021年現在でオフプライスストアの大手は存在しません。
2-1:アメリカの大手オフプライスストア
アメリカには数百~数千店舗の規模で展開するオフプライスストアがすでに存在しています。ハワイやサンフランシスコなどにもあるため、観光や視察で実際に店舗をご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは有名な4社を紹介します。
TJX(マサチューセッツ州)
1976年創業、TJマックス・マーシャルズの屋号で9カ国・4500店を展開するオフプライスストア。19年末で42億ドルを売り上げる。
ロスストアーズ(カルフォルニア州)
1982年創業、「ROSS dress for less」と「dd's discounts」の屋号を展開する。19年末売上は16億ドル。
バーリントンストアーズ(ニュージャージー州)
45の米国州で739店舗(2020年上半期)を展開。商品を定価の6割以上の割引率で販売している。19年末売上は7.3億ドル。
ノードストロムラック(ワシントン州)
1973年創業。米国とカナダに350店舗以上を展開。親会社は百貨店のノードストローム。
3:オフプライスストアが増えた理由
コロナ下で緊急事態宣言が発令され、百貨店や大規模商業施設が休業・閉店に追い込まれたことで、2020年の春物衣料は壊滅的な打撃を受けました。またその後も、第二波・第三波による外出自粛やイベントの中止、リモートワークの普及により、コロナ前に比べてアパレルに求められる需要が様変わりしました。そこでアパレル各社は大量の在庫を抱え、21年春までコストをかけて在庫を保管しておくよりも、在庫を売り払って現金化する動きを見せました。
また、「SDGs」「サスティナブル」という考え方が浸透したことも、オフプライスストア増加を後押ししました。アパレル各社のなかには、これまで売れ残った商品を廃棄していた企業もありましたが、廃棄が環境汚染を助長し、低単価衣料の大量生産が貧困層を苦しめるという考えから、大半がオフプライスストアなどの1.5次流通企業や、コメ兵、買取王国などの2次流通企業と提携し、環境負荷の少ない「リユース」の形で処分するようになりました。
さらに、オフプライスストアでは定価の半額程度で衣料品を売る店舗が多いため、割安に衣料品を買えることも強みと言えます。不況や可処分所得の減少による家計防衛意識から、今後も利用が増えていく可能性を持っています。
4:国内の主なオフプライスストア
ここからは国内の主なオフプライスストアを見ていきます。ゲオクリア社の「ラックラック」アンドブリッジ社の「アンドブリッジ」shoichi社運営の「カラーズ」を中心に、国内で展開しているオフプライスストアをまとめます。
4-1:「ラックラック クリアランスマーケット」
19年4月から「ラックラック」を展開するのが、レンタルショップ「ゲオショップ」やリユース店「セカンドストリート」を運営するゲオの子会社、ゲオクリアです。低単価~中単価のアパレルを中心にした大型店舗を展開しています。
22年12月時点の店舗は21店舗(ポップアップ含む)。200〜400坪の大型店に1万〜2万着のアパレル、雑貨類を販売しています。40代女性を中心に、若い女性が動画SNSサイト『TikTok』等の口コミ経由で来店する傾向としています。
4-2:「アンドブリッジ」
「インデックス」「オロビアンコ」などを手掛けるアパレル大手のワールドと、在庫換価などの動産ビジネスを手掛けるゴードン・ブラザーズ・ジャパンが出資してできた企業が「アンドブリッジ」です。ワールド社が店舗を運営し、主にゴードン社が調達を行います。陳列は他のオフプライス店よりゆとりをもたせた見やすい配置を心がけ、さらに什器にリユース品を使用するなど、環境にも配慮する姿勢を見せます。
19年9月に埼玉にて1号店をオープンした後、関東関西に4店舗を設置(期間限定店舗含む)。3月には茨城県に進出。300坪ほどの郊外型店舗が基本で、意外にも商品の8割程度はワールド社以外のものです。2022年には出店を再開し、商業施設内に300坪前後の売り場を作っていくとしています。
4-3:「カラーズ/カラス」
カラーズ/カラスは在庫処分事業shoichiが運営しているオフプライスストアです。
2012年から小売店として参入し、オフプライスストアという概念が広まる前から国内と東南アジアに店舗を拡げてきました。国内は大阪を中心として、広さ25~40坪ほどの店舗をファッションビルなどに構えています。
カラーズは他のオフプライスストアと違って、仕入れ時に不良在庫を一括で買い入れます。仕入れた衣料の半分を海外の店舗に販売し、もう半分は国内で売ります。売りきれなかった分は工場や建設現場で使われる「ウエス」に加工したり、繊維をほどいて再び衣料の原料にするなど、徹底したリサイクルを行っているのが特徴です。
4-4:その他のオフプライスストア事業者
その他の事業者として、以下の事業者があります。
・「タカハシ」(神奈川県相模原市)低価格帯の商品を中心としてチェーン店を40店舗以上に拡大
・「エストネーション」(運営:サザビーリーグエストネーションカンパニー、東京都渋谷区)銀座でセレクトブランド中心のオフプライスストアを運営
・「オンワードグリーンストア」(運営:オンワード樫山、東京都中央区)モラージュ柏に店舗を構え、同社の衣料品11ブランドを販売
・「ビッグウッド」(愛媛県松山市)アウトレット家具店を直営・FCで50店舗展開、オフプライスストア業態に転換
・「リンネ」(運営:エスピービー(愛知県名古屋市)、京都に古着を併売する衣料のオフプライスストアを開店
またかつてドン・キホーテがオフプライスストアの運営に乗り出しましたが、21年1月に撤退しています。
5:食品にもオフプライス化の波
食品系オフプライスストア大手「クラダシ」事業スキーム
食品のオフプライスストアも増加しています。こちらは消費期限が近づいたために販売ができなくなった廃棄予定の食品を買取り、店舗やECで格安販売するというもの。
衣料品のオフプライスストア同様、「フードロス」など社会課題を解決するための取り組みとして、徐々にそのポジションを確率しつつあります。
現在はECサイトの「クラダシ」や、オークファングループが運営する「NETSEA バルクモール」など、ネット上が主戦力です。
一方、クラダシがホームセンター「島忠」で販売を実施したり、リユース店の「ブックオフ」や「静岡鑑定団」が賞味期限が切れてもまだ飲食可能な食料品販売に乗り出すなど、リアル進出の動きも強まっています。
6:オフプライスストア まとめ
今年、成長が予測されるオフプライス業態。これまで「まだ使えるのに捨てられていた」衣料品などが今後次々と掘り起こされ、無駄のない社会の形成につながっていくことでしょう。また、オフプライスストアの普及により一次流通のアパレル企業と二次流通企業がさらに近い関係になっていくことが考えられます。
リユース業界新聞「リサイクル通信」では、リユースショップ経営者にむけた中古業界の最新動向や、オフプライスストアを始めとする1.5次流通にまつわる最新情報も発信しています。
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