古書店主に、思い出に残っている一冊を紹介してもらうリレー連載。第二回目は東京くりから堂の土屋貴司さんの紹介で、古本遊戯流浪堂の二見彰さんが登場する。
僕の思い出の一冊は鈴木清さんの写真集「流れの歌」です。(個人的に)代表作の「天幕の街」も好きなんですが、それは売れてしまって、手元にないんです。
明日はどんな風が吹く
「流れ」という題名に惹かれ
- 鈴木清 写真集「流れの歌」
- 1972年9月刊 自費出版 1500部限定
この写真集の被写体は炭鉱夫だったり、ストリップ劇場で働く人々や職人さんたち。色々と苦しいことがありながらも必死に生きている。写真からは労働者の貴さや、ひそやかな優しさが伝わってきます。
僕は1968年生まれ。ギリギリこの時代の社会の雰囲気がわかる年齢です。僕の店の根底には生活者の、忘れてはいけない失ってはいけない物ごとが、確実に流れています。
第510号(2021/4/25発行)19面