国内最大規模の古書店サイト「日本の古本屋」、月の受注金額は約3億円 年々成長を続ける
2021年12月16日
国内最大規模の古書店サイト「日本の古本屋」。東京都古書籍商業協同組合(以下:東京古書組合)の事業で、月の受注金額は約3億円。年々成長を続けている。
100周年記念の書籍「東京古書組合百年史」には同サイトの歴史も記されている。「日本の古本屋」事業部副事業部長の小野祥之さんと、同事業部員で「日本の古本屋」部分の原稿を執筆した奥野浩史さんに話を聞いた
古書店サイト「日本の古本屋」
月受注金額3億円までの道のり
存続の危機を乗り越えて拡大
最初は目録の掲載から始まった
「日本の古本屋」が誕生したのは1996年3月。ドメインを取得し、8月からネット公開を始めた。
「最初は古書店のHPの案内がメインでした。当時の古本屋は目録を顧客に送って注文を受けるのが主流でしたので、ネットでも目録を掲載し、電話やファックスで注文を受けるスタイルでした」と奥野浩史さん。
1997年、大日本印刷と三菱商事からネットワークの高度利用を目指した共同実験プロジェクトが提案される。1999年に2社との共同で新システムの「日本の古本屋」がスタート。メール注文も可能になり、これがきっかけで一気に本格的なECサイトの構築が進んだ。
一方、価格をネット上に出すことへの抵抗もあった。小野祥之さんは「販売価格はそれぞれの店舗で違うので、それをまとめてサイト上に載せることに賛否が分かれていました」と話す。
全古書連から東京古書組合にバトンタッチ
ところが、2001年、収益化が難しいとの判断で、同年6月に共同事業は終結。ちなみに6月末時点の月間受注金額は約2800万円だった。
これまでは全古書連(全国古書籍商組合連合会)の事業として位置付けられていた「日本の古本屋」だったが、同年7月から、当時IT化を進めていた、東京古書組合の事業に組み込むことで事業を継続する。
「この時が一番の転換期で、存続するかどうかの瀬戸際だったと感じています」と奥野さん。古書店から共同運営費という形で、利用料を集めることで運営を持続。同時にデータベースや検索機能を強化したリニューアルを実施。11月の月間受注金額は5600万円と、5ヵ月間で約2倍に増やすことに成功した。
2億円突破も横ばい 利用者の声を聞く
その後、2002年12月の月間受注金額は1億円を突破。さらに2007年7月には2億円を超えるまでになった。しかし、2012年頃から受注金額は横ばいから下降気味になる。
そこで公式ツイッターを使い、「#なんとかせえよ日本の古本屋」でユーザーから意見を募った。
挙がってきたのは「商品写真を表示して」「店舗情報をわかりやすく」「クレジットカードを使える店を増やして」といった声だった。
「写真を載せなかったのは、古書店は目録に画像を載せない慣習があったこと、画像を載せると、サーバの負担が大きいのが主な原因でした」と小野さん。
そうした課題の解決に取り組みつつ、ネット広告の導入や、グーグル検索にかかりやすくするSEO対策にも力を入れ、2015年にリニューアルを実施した。
少しずつアクセス数が増え、グーグルの計測によると、2019年8月のアクセス数は110万、2020年8月は173万、2021年8月には272万まで伸びた。
月間受注金額も2020年12月に初めて3億円を超えた。コロナ禍の巣篭もり需要の影響もあるが、奥野さんは「検索に拾ってもらえるような改修をちょっとずつやっていたことが成果につながっている」と話す。
組合員をつなぎとめる重要なツール
現在「日本の古本屋」に出店している古書店数は958店。平均月間受注金額は、3億円を達成できるまで拡大した。
「日本の古本屋に入るために、組合員になる会員もいます。このサイトが組合員をつなぎとめている大きなツールであることは間違いないと思います」と小野さん。
利用料は月々の共同運営費の他に、サイトへの出品点数で課金金額が決まる。手数料はなく、売上は直接店舗に入るシステム。
東京古書組合の交換会(市場)の出来高も1990年代は60億円を超えていたが、現在は半分以下。日本の古本屋の利用料が組合の運営を支える資金にもなっている。
第525号(2021/12/10発行)11面