質屋の店主とお客との触れ合いをご紹介するこのコーナー。今回はがん保険を解約した夫にがんが発覚し、経済的苦境に陥った女性に丁寧な接客で寄り添う店主のお話です。
『宝物』の宝飾品は質預かりに
小諸で1940年に創業された
「ここには本当に助けられています。『神様』です」。こんな言葉をお客からかけられた質屋がある。大栄商事が運営する創業80年余の老舗、質・井沢屋(長野県小諸市)だ。同店には数年前からずっと質預かりを利用している初老の女性Aさんがおり、この言葉はそのAさんの口から出たものだ。
「お客さまのご主人は、経済的に恵まれた仕事をされておられました。老後は年金と貯金で悠々自適の生活をイメージされていたのです。ところが運が悪いことに、ご主人が退職したタイミングでがん保険を解約し、その数ヵ月後にがんであることが発覚。それで人生プランがすっかり狂ってしまったのです」と語るのはスタッフの井澤俊文氏だ。
Aさんの夫は入退院を繰り返すようになり、治療費がかさんでいるようだった。昨今は治療効果の高い先進医療も出てきたが、保険が効かず、100万円以上する高額なものもある。Aさんは経済的にギリギリの状態に追い込まれ、貴金属やアクセサリーを預けて、お金を借りるようになった。
第540号(2022/7/25発行)27面