千年質屋【第10回】(後編)大進洋行、3代目は預かりと買い取り同額で査定

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千年質屋【第10回】(後編)大進洋行、3代目は預かりと買い取り同額で査定

2024年07月03日

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千年質屋10回 大進洋行

大進洋行(愛知県名古屋市)は太平洋戦争末期に店を失いましたが、3代目の三輪暹が朝鮮戦争時に商才を発揮して店を再建。以降、時代を先取りした広告宣伝や独自のサービスで事業を拡大。2013年に社長となった4代目敏春も時代の変化に対応し、祖父とは異なる経営手法で事業を展開しています。

4代目は従業員のやる気引き出す経営にシフト

新聞の折込チラシや
セスナ機で広告宣伝

大進洋行 1989年(平成元年)、区画整理により東区大曽根に移転して建設された現在の店舗大進洋行 外観は老舗料亭のようだが、鉄筋コンクリート造りで防火、耐震にこだわり、蔵の周辺には分厚い鉄板を入れた1989年(平成元年)、区画整理により東区大曽根に移転して建設された現在の店舗。外観は老舗料亭のようだが、鉄筋コンクリート造りで防火、耐震にこだわり、蔵の周辺には分厚い鉄板を入れた

高度成長期に入ると、3代目の三輪暹(すすむ)は当時の質屋がやらなかったことに次々とチャレンジした。その一つが広告宣伝だ。例えば、新聞の折込広告として赤色単色刷りの細長いチラシをつくり、配布範囲は市内はもちろん、買取店のなかった郊外にまで及んだ。その結果、遠方から足を運ぶお客が増えた。また、セスナ機の側面につけた大きなスピーカーによる広告宣伝飛行も行った。

大曽根店は大いに繁盛し、暹は1969年(昭和44年)に上飯田店を新規開店した。上飯田は下町で近くに大きな団地があり、その地域の住民はもちろん、買取店が近くになかったため、郊外から足を運ぶお客も多かった。また、創業時からの「お客様の得を第一に」という教えのもと、独自のサービスも導入した。一般的な質店は、今でも質預かりの査定を買取りより下げているが、大進洋行は買取りも質預かりも同額で査定した。また平均して質預かり期間は3ヵ月が主流だが、同店は4ヵ月と1ヵ月長くし、延長期間も無期限にした。

3代目の大きな出来事として本店の移動がある。1989年(平成元年)、区画整理によって北区大曽根から東区大曽根に移転を余儀なくされ、店を建て替えた。質屋らしさを払拭しようと、デザインは老舗料亭を意識して造られた。建物は鉄筋コンクリートで防火、耐震にこだわって建てられ、特に質草を保管する蔵の周辺は壁に分厚い鉄板を入れた。

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第586号(2024/06/25発行)17面

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