【社説】認知拡大に伴い、社会的な責任問われる時代に

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【社説】認知拡大に伴い、社会的な責任問われる時代に

2024年07月10日

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社説 認知拡大に伴い、社会的な責任問われる時代に

2024年上半期は
多事多難な年に

2024年上半期を振り返ると、リユース業界にとって近年稀に見る多事多難な年だ。

年明け2月に起きたトケマッチ事件の際には、この被害品を買い取った企業が非難されかねない状況に陥った。また、黄金茶碗窃盗事件の際には、相場から大きく逸脱した買取価格の低さが話題となり、窃盗の容疑者から買い取った店に批判が集まった。そして、ブックオフの従業員による不正疑惑の詳細はまだ明かされていないが、ネガティブな憶測が広がっている。こうした事件が相次いでおり、リユースに対するマインドの低下が危惧される。

リユースが注目を集めメディアに取り上げられる機会が増える中、ネガティブな面も大きく取り上げられる。それだけリユースが消費者にとって身近なサービスになった証と捉えることもできる。コロナ以降、世間へのリユースの認知は急速に広まった。足下では物価高の状況が続く中、割安な中古品という選択肢は消費者の支持を集めている。それに伴い市場規模も今や3兆円弱の規模に拡大。日本だけでなく、世界的なトレンドを迎えている。

そうした中で、リユース企業にはCSR(企業の社会的な責任)がより問われる時代に入ってきた。これは上場企業や大手企業に限った話ではない。法令遵守に留まらず、倫理観等も求められる。リユース企業が招いた不信感の積み重ねが今年4月の景品表示法の運用改定へとつながった面がある。合法であれば、何をやってもいいと言う時代ではない。

市場過熱に潜む危うさ
「襟を正す」機会に

リユース市場は不用な物をお金に換え、消費者の可処分所得を増やし、廃棄物の排出を抑制するなど社会的な意義が大きい。一方で、押し買い問題や盗難の温床と指摘されたり、従業員の不正を招きやすいといった負の側面も抱えている。

古物に対するネガティブなイメージを払拭してきたことが、市場の成長につながったのは言うまでもない。ただ、好調な業績を背景に慢心はなかったか、組織やガバナンスに緩みや歪みが生まれていないか。肝を冷やす事件が相次ぐ中、襟を正す機会にしたい。

リユースはどこか怪しげなマイナー市場から、社会から評価されるメジャー市場へと変貌を遂げようとしている。

しかし風向きが変わってしまうのは一瞬のことだ。市場が過熱する一方で危うさが漂っている。市場に対する危機感を読者の方と共有したい。

(編集長・瀬川淳司)

第587号(2024/07/10発行)2面

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