創業105年の須賀質店(東京都品川区)は、二代目・須賀清一の代に消費者金融が台頭し、質の需要減少に伴い、不動産業に比重を移しました。ところが三代目・兼一が事業を継承すると時代に合ったやり方を導入して質業を拡大、不動産業の2倍の収益を上げるほどの成功を収めます。
ネット集客と低利子でビジネスを大幅に拡大
二代目・清一が突然倒れ
息子兼一が質屋を継承
三代目の兼一は金利の改定に取り組んだ。HPトップには「業界最低水準1.2%」と謳っている
2003年(平成15年)春、店を一人で運営していた二代目・須賀清一が体調を崩して入院し、須賀質店は存続の危機に直面した。
「父が記憶喪失のような状態になったので、会社を辞めて、翌年4月に株式会社須賀質店の代表取締役に就任しました。40歳手前のオールドルーキーです」と三代目・兼一は当時を振り返る。不動産会社に入社して13年目、38歳の時だった。家業に携わったことがなかった兼一は、母に店を任せ、RKオークションなど複数の市場に参加し、業界のキーパーソンと交流してさまざまなことを教わった。やがて質と不動産は査定の仕組みがよく似ていることがわかり、質にビジネスとしての可能性を感じるようになった。
「お客様が『これ、いくらになるの?』と聞くのは不動産と質くらいです。不動産の営業時代はレインズやスーモで調べて土地や建物の値付けをしていましたが、質も似ていて、オークション市場の落札結果を見れば査定は難しくありません」
一方、他業界にいた兼一には、従来の質屋のやり方に違和感を感じることが多々あった。例えば、質屋の存在が認識されていないのに、広告宣伝に力を入れていない。また、消費者金融などの競合より金利が高い。それらを改善すれば、質は伸び代のあるビジネスのように思えた。
第598号(2024/12/25発行)19面