《皮革製品修復ラボ(10)》金具劣化・革だけピカピカはNG

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《皮革製品修復ラボ(10)》金具劣化・革だけピカピカはNG

2013年07月30日

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皮革製品 修復ラボLesson.11 最終仕上げと検品

全体チェック!『佇まい』問題ない?

前回まででオーダー、検品、前処理、クリーニング、カラーリングと進んできた。今回がそのファイナルワークだ。最終仕上げと検品を詳しく説明する。作業工程のお話としては最後だ。重要項目なので理解していただきたい。

顧客に納品するための最後の関門は『美しさ』『見映え』『コンディショニング(素材や個体の状態)』である。これらが満たされているか以下の順にチェックしよう。

①色ムラが無いか徹底的に探す

見つけたら、カラーリングの工程で調色した際に保管しておいた染料をつかって修正する(本来は色ムラがあるようでは技術的にNG!なので、あまり無いことだ)。

②キズの箇所、汚れ部分などを重点確認

きちんと処理されているか、周りとぼかし切れているかなどを確認する。乾燥後に変化が現れる場合も稀にあるので注意して見よう。

③全体チェック

佇まいを確認しよう。美錠(バックル) や金具の劣化と、革部分のバランスがとれているだろうか。金具は使用感があるのに革部分はピカピカでは良くない。あらゆる角度から眺め、違和感が無いか見る。

チェックが終わったら最後の仕上げだ。元々カビていたものや、カビ防止依頼のあった製品は「防カビ加工」を施す。

布地やナイロン素材の商品なら、撥水加工を希望によって施す。

そして最も大切なのは「適度な保湿」を行うこと。硬化やひび割れを防ぎ健康的なお肌をキープする。皮革の内部を潤すために、極めて浸透率の高いモイスチャライザー(高浸透率保温クリーム) を使おう。バッグは養分や油分が内部から失われていることが多く、下手なクリームを使うと浸透するより表面定着してしまうことも。シミになるので要注意だ。

当社でもカビを根絶する防カビ剤や、ルイ・ヴィトンのモノグラムラインに使われるヌメ革でもシミにならず浸透するトリートメントを開発している。ユナイテッドアローズさんから発売されているので是非お試しあれ。

そのほか、型崩れの再補正やツヤの出し入れなど、顧客のニーズやウォンツを反映させて最終仕上げをしよう。

このように、チェックをしながらディティールの処理や付加価値付けを行っていく。お客が事業者の場合は「いかに売りやすいか」という視点で。ユーザーの場合は「オーダー通りになっているか」という視点で手掛ける。

我々技術屋は、オリジナルに則りながらリフレッシュし、ユーザーがこれからも永く使い続けられるようなコンディショニングを追求している。その一端をご紹介した。

少し専門的な話が続いたので、次回はリサイクル店の店頭ですぐ使えるノウハウ系のお話を紹介しようと思う。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

324号(2013/07/25発行)16面

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