《皮革製品修復ラボ(11)》内袋張り変え5年の寿命、半永久に

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《皮革製品修復ラボ(11)》内袋張り変え5年の寿命、半永久に

2013年08月30日

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皮革製品 修復ラボLesson.11 多い修復依頼は

鮮度90%のブランドバッグ大量埋蔵?

鮮度90%のブランドバッグが、「ある理由」でたんすの中にたくさん埋蔵されている。

ある理由とは、「ベタ」だ。外側の革は問題無いのに、内袋がベタベタで使い物にならない。そんな状態のことを言う。さらに症状がひどくなれば、ポロポロとはがれてまだらになるものもある。

原因は、内袋に使われているポリウレタンの加水分解だ。原産国のヨーロッパよりも湿度の高い日本では、よりこの経年劣化が進みやすい。

外側の革の寿命は5~20年あるのに、内袋は5年程度、長くて7年で寿命がくる。そのため、一見問題の無い鮮度90%の商品が使用できなくなってしまうのだ。

解決法はある。内袋を貼り変えるのだ。

加水分解しない内張り用の布をつかえば、その後はベタベタすることがなくなる。

内袋の張替え費用はモノにもよるが、1.5~4万円程度が目安。ブランドロゴプレートやポケットなども、オリジナル通り元の場所に戻せる。思い入れのある商品を除くと、購入価格20万円以上の商品なら、お客さんは張り替えても元がとれる感覚になるのではないかと思う。

しかし、流通マーケットにおいて、この方法は賛否両論というのが現状だろう。ブランドの製品にどこまで手を加えていいものかガイドラインが確立されていないため。商標権侵害のリスクをおかしてまでやりたくない、というのが反対派の意見だ。

一方消費者はほとんどが賛成で、アフターマーケットにおいては高いニーズがある。外側は問題ないわけなので「直してくれたら、使える」からだ。

私は長年、百貨店のスポット出店で革製品のメンテナンスを受け付けているが、一番多い依頼が「中ベタ」修復だ。お客さんは「直してくれないと使えない」と言って困っている。

当社のような業者にめぐり合わず、新品販売店に持っていくと多くの場合「劣化だから仕方ありません」と言われる。では売ろうかと、リサイクルショップに持っていくと、「ベタベタだから買い取れません」と断られる。それでも見た目はキレイなので、もったいなくてタンスの中に置いておき、埋蔵されるという悪しき流れがある。

特に、中ベタ化が進みやすいのは高額なバッグだ。加水分解を遅らせるには通気性が重要なのだが、高額なバッグは普段づかいせず勝負バッグとして保管されていることが多い。これがアダとなっている。しかし裏を返せば、内袋の問題さえ無ければ価値の高いバッグが眠っていると見ることもできる。

リサイクルショップがもし修復を選択肢として持っていれば、①再販するために自社で修復する②中ベタのまま販売して、所有権をお客さんに移してから修復を請け負う。などサービスを展開することができる。①は法に抵触しないか判断が難しいが、②ならリスクも少ない。

このように消費者の需要に応えるリサイクルショップは無いのだろうか。修復の現場から、いつももったいなく感じている。

川口 明人氏≪筆者 Profile≫ 川口 明人氏

1960年、神奈川県生まれ。根っからの靴、バッグ好き。大学卒業後ヨーロッパに渡りフランスのシューズブランドに就職。帰国後は婦人靴ブランドのマネージャー、ブランドバッグ販売責任者、婦人靴メーカー商品企画・製造責任者などを歴任。皮革製品修復の「美靴工房」立ち上げに参画。現在は同社の専務取締役として女性修復師チームを率い数多くのメゾンブランドから指名を受ける。メディアにも度々取上げられており、質店・ブランドリサイクル店にとっては駆け込み寺的存在。

326号(2015/07/10発行)5面

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