第30回 宝石のソーティングは必ずつけるべき??
古物市場への出品は、会主への参加連絡から出品情報の提出、品物の配送手配までやることがたくさんあります。品物の価値だけでなく、丁寧に準備を進めることで落札値が上がる可能性があることはこれまでもお伝えしてきました。
そうした準備の中で「これはやった方がいいことなのかな」と迷うこともあると思います。誰しも少しでも高く売りたいのは同じですが、そのために必要な準備とそうでないものは把握しておかないと、余分な労力を割くことになりかねません。今回は、時折耳にする「宝石に"ソーティング"はつけた方が高く売れるのか」についてお話します。
そもそもソーティングとは、宝石鑑定の専門機関が発行した簡易鑑定メモのことを俗に「ソーティング(メモ)」と呼びます。簡易、というのは冊子型の鑑定/鑑別書と違い、ソーティングは小袋にシールで宝石のグレードが記載されているからです(鑑定/鑑別書と比べて、鑑定結果に差が出ることはありません)。
ダイヤはほぼ必須、色石はものによる
さて、本題のソーティングをつけた方が高く売れるのか。結論からいうと「ダイヤはほぼソーティング必須」「色石はものによる」といった感じでしょうか。
まず、ダイヤについては見た目でグレードが低いと分かるもの(ブラウンカラー等)以外は、ソーティングをつけた方が市場での落札値も上がります。特に、キャラ目が3分石(0.30ct)以上のものは必ずつけましょう。中央宝石研究所などの信頼と実績のある鑑定機関が発行するソーティングや鑑定/鑑別書は宝石への評価に直結しますから、コストをかけてでもつけた方がいいと思います。
注意したいのが、「旧鑑定」や「B鑑(ビーカン)」「他鑑(タカン)」と呼ばれるソーティング。旧鑑定とは、現在発行されている鑑定書とは異なる、古い鑑定書のこと。ダイヤのグレーディング評価基準がシビアになった今、旧鑑定書時代の石を再鑑定すると、グレードが下がることが往々にしてあります。またB鑑、他鑑とは、いわゆる有名どころではない鑑定機関が発行した鑑定書の俗称。先述の中央宝石研究所などと異なり、鑑定結果への信頼感は幾分下がります。
これらはいずれもソーティングに記載されたグレーディングよりも、低く値踏みされがちです。市場に出品する際には(例え今よりグレードが下がることになっても)再鑑定に出して、適正な鑑定結果を添える方がおすすめです。
最後に、色石について。低価格帯のファッションリングなどについている宝石であれば、無理にソーティングをつける必要はないでしょう。ソーティングの有無で大きく値段が変わらないため、鑑定依頼にかかるコストを考えるとかえって損です(ただし、10万円以上の落札値が見込める品物はソーティングがついていた方が、値段が伸びる可能性は高いです)。
ルビー、サファイアでしたら、ソーティングは必ずつけるようにしましょう。特に、希少性の高いノーヒート(非加熱)の石であれば、ソーティングで明記されていれば値段はグンと上がります。
駆け足ですが、ソーティングの有無で市場の落札値に影響があるものについてお伝えしました。宝石の鑑定依頼はコストと時間がかかりますが、石の価値を正しく表して、適正な値段をつけてもらうためには必要な準備。鑑定必須の石とそうでない石をきちんと区別して、効率的な市場出品を心掛けていきましょう!
齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ
執行役員 兼 オークション事業本部 本部長
Profile
グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。
410号(2017/02/25発行)17面