骨董買取の技法 第1回
中国需要で銀瓶が高騰中
「2000万円儲け損なった。もっと早く藤生さんに出会っていれば・・」 現在当社と提携している、貴金属買取会社の社長の言葉です。
煎茶などで使う道具に、「銀瓶」と言う「純銀製」「銀製」のやかんのような形をした瓶があります。標準的な大きさのもので500g。潰し値段で売ると1つ3万円程度でしょうか。
彼は私と出会う前、4年間でこの銀瓶を地金買取業者に100個ほど潰しで売っていたのです。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、この銀瓶、中国富裕層の需要により急騰した商材の一つで、標準的なもので最低でも上代25万円ぐらいで売れます。ですから、骨董の目利きで買い取る当店なら査定額は最低でも、1つ20万円以上。つまり、冒頭の2000万円という金額になっていくのです。
申し遅れましたが、私は、東京・世田谷と千葉市内で骨董品の買取店を経営している藤生と申します。また、「弥生会」という骨董品業者の交換会を毎月22日に上野で主催しております。この業界ではまだまだ若輩者ですが、先の見えないこの時代、少しでもリサイクル店を運営する皆さまにも骨董品や茶道具などに興味を持っていただき、利益UPの一助になればと連載を引き受けました。
非常に高額な「秦蔵六 銀瓶」
さてその銀瓶ですが、最低25万円と述べましたが上はいくらになるでしょうか?先日、中国人向けのオークションが東京で開催されました。その時一番高値で売れたのは『玉川堂の銀瓶』。何と550万円の値がつきました。1664gあるので大きい物ですが、もし潰しだったらグラム60円計算で10万円ぐらいにしかなりません。540万円も売却額に開きがあるわけです。
今回の銀瓶は古いものですが、玉川堂は今もあり、茶托や茶筒などの買取りで皆さまも出会ったことがあるかもしれません。銀瓶は作者や制作年代、象嵌や彫などの技法、摘みの素材などで値段が決まります。高価で売れる作家の一例としては、「秦蔵六」「中川浄益」などが挙げられます。もしこうした商品が入ってきたら、潰す前に商品として売れないか検討すべきでしょう。
その他、銀製品の中で潰し以上で売れる商品は、「茶托」「香炉」「花器」「ボンボニエールなどの小物類」。特に、16花弁の菊花の紋章があしらわれた天皇陛下などから下賜される花瓶(一対なことが多い)は、作家によって何百万円・何千万円で売れたりします。このような皇室グッズは、永遠の売れ筋アイテムですね。
逆に、銀製品で基本的に売れない物は、「盃」「トロフィー」「メダルの類」です。
ただ、気を付けなければならないのは、このような銀瓶・鉄瓶にも偽物があることです。詳しい見分け方は、この後連載の中で後々紹介していきたいと思います。
藤生 洋
<プロフィール>
昭和42年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、ロッテの財務部で勤務。サラリーマン時代から骨董市に通う。歴史好きが高じて平成11年、31歳で起業。ネットオークションや骨董市で骨董品の販売をはじめる。平成13年には「(有)北山美術」に改称。平成24年には骨董の業者間オークション「弥生会」を3社共同で立ち上げ、会員数200社の規模に拡大する。現在は店舗と事務所を東京・千葉・札幌に展開している。骨董店での修行無しに独自に事業を軌道に乗せた手腕が話題になり、 2冊の著書を上梓。
371号(2015/07/10発行)4面