第38回 慣れてきたら要注意!市場のマナー
市場に顔を出す機会も増えて、狙った商材も競り落とせるようになってきた。顔馴染みもできて、バイヤーの醍醐味にハマり始めてきた・・・。とても喜ばしいことですが、慣れてきたときこそ気が緩みやすいもの。慣れによる仕事のミスはもちろん、さらに気をつけたいのが「マナー」。
慣れてくると居心地も良くなってきて、初めのうちは心掛けていた気配りが、ついついおろそかになりがち。今回は下見から競り終了後まで、市場でのマナーについてお話したいと思います。
まずは下見会場でのマナーから。市場にもよりますが、限られた空間にぎっしり商材が詰まった箱が所せましと並べられている場合がほとんど。下見期間も限られていますから、譲り合いの精神が大切です。「自分が見たいからといって箱を占拠しすぎない」「見終えた後は次の人が見やすいように商材を元通りにしまう」ことは意識的に行いましょう。よく見かけるのが、商材の出しっぱなし。マナー的にNGなだけでなく、商材が傷ついたり故障したりする原因にもなるので特に注意したいところです。
また、下見期間のピークは混み合いますから、一社で複数名による下見の際は、空いている日時を選ぶ、といった心配りができるとグッドです。
競り本番で気をつけたいのが「手競り」です。声を張らず、指のサインだけで値を差す様はベテランの風格たっぷりで格好良いのですが、マナー的にはよくありません。手競りは、振り手と買い手間だけで成立するアイコンタクトのようなもの。周りからすれば競りがいくらで進行しているか分からず、親切とはいえません。手競りOKを謳っている市場以外では、基本的に止めておいたほうがいいでしょう。むしろ、最近はベテランの方ほど大きな声で競ってくれますよ。
もうひとつ気をつけたいのが、本番中に席を立つタイミングです。トイレや仕事などは仕方ありませんが、競りの最中に休憩のために席を立つのはなるべく少なくしたいもの。特にお昼休憩前にまだ会場が競っている最中、用意されたお弁当をフライングゲットするのは、極力避けましょう!自分の競りが終わっていたとしても、他の人は真剣勝負の真っ最中ですから、バイヤー同士の礼儀として控えたいですね。
最後に、すべての競りが終わったら、売買の集計が終わるまではできる限り会場内に留まるようにしましょう。保留となった品物や値段の交渉など、競りが終わってからも場内では市場のスタッフが目まぐるしく動いています。もしも参加者が会場の外に行ってしまうと、確認が取れないため集計が終わらない=市場の終了もその分遅くなっていくため、参加者全体に迷惑がかかることとなります。競りが終わった後は会場内にいるようにする、万が一外に行く場合はスタッフにその旨を伝えてあげる配慮が望ましいといえます。
以上、市場でのマナーについてお話しました。「そんなの勝手じゃねーか」と思われる方もいるかもしれませんが、スムーズな運営と気持ち良い競りが行われている市場は、多くの方々の気配りと思いやりで成り立っています。願わくは、参加者みんながマナーを心掛けて満足度の高い市場をつくりあげていきたいですね。
齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ
執行役員 兼 オークション事業本部 本部長
Profile
グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。
426号(2017/10/25発行)17面